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【連載9:AFTER】ヤダ触らないで!「彼氏と電話中なのに」力任せでバスルームに…

2016/01/31 21:00  by   | モテる女

テッサがハーディンの部屋で発見したのは、意外にも自分の愛読書エミリ・ブロンテの『嵐が丘』。

ハーディンがお坊ちゃま男子学生の社交クラブであるフラタニティであったことに、ショックを隠せないテッサでしたが、「それが何か?」と勝手に部屋に入られ怒りのハーディンに追いつめられてしまいます。

「きみがおれといちゃいちゃしたいなら、申し訳ないけど、好みのタイプじゃない」

「あなたって人は……」

不愉快な気分で精神的にもぼろぼろにされたテッサは、毅然とした態度で部屋を出て階段の下り口に向かいましたが、流れてくる涙を抑えることはできませんでした(前回)。

 

■彼氏に電話してみたけど……

濡れたほほをそっと拭いながら、ふと気づいた。このフラタニティハウスの所在地も、寮へ戻る方法もわからない。パーティーに来ると決めたのを思い返すたび、自分に腹が立ってしかたない。

最初によく考えるべきだった。こんなことが起こらないよう、なにごともきっちり計画を立てる性分なのに。フラタニティハウスはまだにぎわっていて、やかましい音楽が鳴り響いていた。ネイトもゼッドも見当たらない。とにかく二階で部屋を見つけて、床で寝るほうがいいだろうか。

すくなくとも十五部屋はあったし、運がよければ、空いているところがひとつぐらいあるかもしれない。感情を表に出すまいとしてもわたしには無理だし、一階に下りていって、こんな状態でいるのを見られるのはもっといやだ。ステフと入ったバスルームへしかたなく戻り、ひざのあいだに顔をうずめて座る。

ふたたびノアに電話すると、こんどは二度目の呼び出し音で出てくれた。

「テス? もう遅いよ、だいじょうぶ?」眠たそうな声だ。

「ええ。ううん。ルームメイトとばかげたパーティーに来て、フラタニティハウスで身動き取れなくなっちゃった。寝るところもないし、寮に戻る手段もない」わたしは泣きじゃくった。生死に関わる問題ではないけれど、どうしようもできない状況に自分から飛びこんでしまったのがくやしい。

「パーティー? あの赤毛の女子と?」

「そう、ステフと。でも、彼女は二階で気を失って伸びてるの」

「ワオ。でも、だいたいなぜ、そんな人といっしょにいるの? 彼女はすごく……きみがつき合うようなタイプじゃないよ」軽蔑するような口調に腹が立つ。だいじょうぶ、心配いらないよ、明日は明日の風が吹くさ。前向きに励ましてほしかったのに、こんなふうに厳しいことを言われるなんて。

「そういう問題じゃないんだってば、ノア……」ため息まじりに話し始めると、ドアのハンドルががちゃがちゃ鳴ったので、わたしは体を起こした。「ちょっと待って!」外にいる人に向かって叫び、トイレットペーパーで目のまわりを拭いたものの、アイライナーがよけいにじんだだけだった。

「あとでかけ直す。誰か、バスルームを使いたいみたい」ノアに何か言われる前に電話を切った。

 

■「触らないで!」

向こう側にいる人が、力任せにノックしてくる。わたしはうめき声とともにドアを開け、目のまわりをふたたびこすった。「ちょっと待って、って言ったのに—」

こちらをにらみつける緑色の瞳に、わたしは言葉を失った。

吸いこまれそうな瞳を見つめるうちにはっとした。ハーディンの瞳が何色なのかいままでわからなかったのは、彼が目を合わせようとしなかったからだ。いまもまた、深い緑色の瞳を丸くしているものの、すぐに顔を背けた。そのくせ、押しのけて出ていこうとするわたしの腕をつかんで引き戻そうとする。

「触らないで!」大声をあげて、わたしは腕を振りほどいた。

「泣いていたのか?」心の底から気になる、といった口調。これがハーディンでなかったら、わたしを気遣ってくれていると勘違いしただろう。

「いいから、かまわないで」

彼はわたしの前に回りこむと、長い手足でこちらの動きを封じこめた。もういやだ、こんな駆け引きにはつき合っていられない。

「ハーディン、かわいそうだと思うなら、放っておいて。意地悪なことを言いたいだけなら、明日にしてよ。ほんと、お願いだから」どうしていいかわからず困惑しているのがバレてもいい。とにかくいまは、彼とは関わりたくなかった。

ハーディンの目に動揺が走る。彼はこちらをじっと見てから、おもむろに口を開いた。「廊下の突き当たりに近いところに、きみが眠れる部屋がある。ステフも、おれがそこに連れていっておいた」とそっけない声で言う。続きがあるのかと待ってみても、彼はそこで言葉を切ったまま、わたしをまじまじと見つめるばかりだった。

「オーケー」とつぶやくと、彼はどいてくれた。

「左側、三番目の部屋だ」そして廊下を歩いていき、自分の寝室に消えていった。

いったいどうしたのだろうか。ハーディンが失礼な言葉を一度も吐かなかったなんて。明日だって、顔を合わせたら絶対トラブルになる。わたしが課題をしあげる予定を立てるように、彼は人を傷つけるコメントをノートに書き留めていることだろう。明日のターゲットは、きっとわたしだ。

廊下の左側、三番目にあったのはごくふつうの部屋で、ハーディンの寝室よりずっと狭いにもかかわらず、ベッドが二台あった。

彼はここでいちばん偉いまとめ役なの? みんなを脅していちばん広い部屋を分捕ったというなら、理解できるけど。ステフは窓に近いほうのベッドで大の字に伸びていた。わたしは靴を蹴るようにして脱ぎ、彼女に毛布をかけてから、ドアをロックしてもうひとつのベッドに横たわった。

輪郭のぼやけた薔薇の花や、怒りに満ちた緑色の瞳……そんなイメージが夢を彩るうち、わたしは深い眠りに落ちていった。

 

■目覚めてみると……

どうして、見覚えのない部屋で寝ることになったのだろう。目が覚めても、ゆうべの出来事を思い出すまで時間がかかった。ステフは大きな口を開けていびきをかいている。寮にどうやって戻るのかわかるまで、彼女を起こさず待つことにした。

靴を履いてバッグをつかみ、部屋を出る。ハーディンの部屋のドアをノックすべきだろうか。それともネイトを探す? そもそも、彼はこのフラタニティハウスの住人なの? ハーディンがフラタニティのメンバーだというのも予想外だったから、ネイトがそうだとしてもおかしくはない。

廊下で寝ている人たちをまたぎながら、わたしは一階へ下りた。

「ネイト?」返事を期待して声をかける。リビングだけでも、すくなくとも二十五人は寝ていた。床は赤いカップやごみでいっぱいで、それを避けて歩くのもひと苦労。それを思うと、二階の廊下はおおぜい人がいたにもかかわらず、すごくきれいだった。

キッチンにたどり着くと、あたりを片づけたくなるのを抑えるのが大変だった。フラタニティハウス全体を掃除するには、まる一日かかるだろう。このごみをハーディンがひとりで片づけているところを見てみたい。そんな考えが頭に浮かび、わたしはくすくす笑ってしまった。

「何がそんなにおかしい?」

振り向くと、手にゴミ袋を持ったハーディンがキッチンに入ってくるところだった。

 

次回、ようやく寮に戻ったテッサは、いよいよ月曜日、大学での授業一日目をむかえます。順調に思えた一日でしたが、最後の授業にハーディンがあらわれ……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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