【連載11:AFTER】やめて…あなたとは違う!引き出された「わたしのなかの最悪の部分」

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大学での授業一日目を迎えたテッサは、一日五コマと詰め込みすぎたことを少し後悔するも、充実した時間を過ごします。

また、クラスでは、大学で初めて、自分と同じ“真面目な”タイプのライドンと出会い、意気投合。しかし、ホッと安心するのも束の間、そこにまたハーディンがあらわれたのです(前回)。

「もう、最悪」

「ハーディンと知り合いなの?」

真面目なタイプのライドンにも知られていたハーディン。なぜそんなに有名人なのでしょう?

 

■わたしの中の最悪な部分

「まあね。ルームメイトが彼と友達なの。わたしはとくに仲良しってわけじゃない」

そうささやくと、ハーディンの緑色の瞳がこちらを見た。聞こえたのだろうか。彼に何かされるかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。お互いに相手が大嫌いなんだから。

とはいえ、ランドンがハーディンの何を知っているのかが気になる。好奇心を抑えきれず、わたしは質問した。「あなたは? 彼の知り合い?」

「ああ……彼は……」ランドンは言葉を切り、ちらっと後ろを見た。わたしが顔をあげると、ハーディンがいつの間にか隣に座っていた。それから授業が終わるまでランドンはずっと黙ったまま、教授の顔をひたすら見つめていた。

「今日はここまで。じゃあ、つぎは水曜に」ヒル教授の言葉とともに授業が終わった。

「このクラスがいちばん好きになりそう」校舎の外をいっしょに歩きながら言うと、ランドンもうなずいた。しかし、隣を歩いているハーディンに気づいたとたん、彼は下を向いた。

「何か用、ハーディン?」不愉快な気分にさせてやろうと、口調をまねしたのに、彼はいまにも吹き出しそうな顔になった。

「いや、何も。いっしょのクラスになれたのがうれしくてさ」彼はからかうように言うと、両手で額から髪をかきあげた。手首のすこし上に、不思議なタトゥーが入っている。

無限大のシンボルにも見えたが、わたしがまじまじと眺めようとしたのに気づいたのか、彼はさっと手を下ろした。

「じゃあまたね、テッサ」と言ってランドンは去っていった。

「よりによって、クラスでいちばんつまらない男と仲良くなったんだな」ハーディンは彼の後ろ姿を目で追いながら言った。

「やめて、ランドンはすごく感じのいい人よ。あなたと違って」きつい言い方に、自分でも驚く。ハーディンのせいで、わたしのなかの最悪な部分が引きだされてしまう。

彼はこちらを向き直った。「おれと話すたびに、きみは怒りっぽくなるんだな、テレーサ」

「こんどテレーサと呼んだら、そのときは……」そう警告したのに、ハーディンは取り合わなかった。タトゥーやピアスがなかったら、彼はどんなふうに見えるのだろうか。いまもルックスだけは魅力的だけど、ひねくれた性格のせいで台無しだ。

寮に向かって二十歩ほど歩いたところで突然、ハーディンが叫んだ。「じろじろ見てんじゃねえよ!」わたしが返事をする間もなく、彼は角を曲がって歩道へ消えていった。

 

■ダブルデートって、誰と?

心身ともにくたくただけど刺激的な日々が過ぎ、ようやく金曜日になった。大学生活最初の週ももうすぐ終わり。この一週間の収穫に満足しつつ、今夜は映画を見ることにした。

ステフはたぶんパーティーに行くから、部屋でひとり静かに過ごせる。授業のシラバスも全部手に入れたのでプランニングしやすくなったし、たくさんある課題にも早めに取りかかることができそうだ。

わたしはバッグをつかんで早めに部屋を出た。週末にそなえてパワーチャージできるよう、カフェでコーヒーを買うためだ。

「テッサ、だよね?」並んだ列の後ろから女子の声がした。振り向くと、パーティーで見かけたピンク色の髪。モリー、とかステフが呼んでいた子だ。

「そうだけど」と答えてカウンターに向き直る。これ以上、会話をするのは避けたい。

「今夜のパーティー、来る?」そう尋ねてきたけど、わたしをばかにしてるに決まってる。ため息とともにもう一度振り向き、ノーと答えようとした瞬間、彼女が言った。

「来なよ、すごいパーティーになるから」そして、前腕にある大きな妖精のタトゥーに短い指を走らせる。

一瞬、言葉を失ったものの、首を横に振りながら答えた。「ごめん、予定があるから」

「なんだ、残念。ゼッドが会いたがってたのに」

聞いた瞬間、声をあげて笑ってしまったけど、彼女はにんまりした。「何よ? つい昨日、彼があんたのことを話してたんだってば」

「まさか……だとしても、わたしにはボーイフレンドがいるから」そう言うと、彼女はいかにも楽しげに笑った。

「ふうん、残念。あたしたち、ダブルデートできたのにな」

どうとでも取れる曖昧な発言。でも、ちょうどそのとき、バリスタがわたしのオーダーができたと声を張り上げた。内心ほっとしながらカップをつかむと、すこし乱暴だったせいか、コーヒーがこぼれて手をやけどした。

モリーがバイバイと手を振るので、わたしもにっこり笑ってカフェを出たが、頭のなかでは彼女の言葉がぐるぐるしていた。

ダブルデートって、誰と? 彼女とハーディン? あのふたり、ほんとうにつき合っているの?

いくらゼッドが親切そうで魅力的だとはいっても、わたしのボーイフレンドはノア。彼を傷つけるようなことは絶対にしない。今週はあまり話せてないけど、それはふたりとも忙しかったからだ。今夜は電話して、わたしのいない日々をどう過ごしていたのか聞かせてもらわなくては。

 

■ハーディンとふたりで……!?

コーヒーでやけどをしたり、ミス・ピンクヘアとの気まずい出会いはあったものの、その後はまあまあだった。同じ授業に行く前には、ランドンとカフェで待ち合わせることにしていたので、彼はレンガの壁に寄りかかりながら満面の笑みで迎えてくれた。

「今日の授業は三十分ほどで早退する。言ってなかったけど、週末は実家に飛行機で帰るんだ」ダコタと会えるのはよかったと思うけど、ひとりで英文学の授業を受けるのはちょっと気が重い。ハーディンが来たら、どうしよう。もっとも、彼は水曜の授業にはいなかった。べつに、とくに気にしていたわけではないけれど。

わたしはランドンのほうを向いた。「新学期が始まったばかりなのに?」

「ダコタの誕生日なんだ。もう何カ月も前から、いっしょに過ごそうって約束してたから」彼は肩をすくめた。

授業中、隣に座ったハーディンはひと言も話しかけてこなかった。ランドンが早退したあともそれは変わらなかったが、かえってハーディンの存在が気になってしかたない。

「月曜からは、一週間かけてジェーン・オースティンの『高慢と偏見』を取りあげる」とヒル教授が授業の終わりに言った。わたしは興奮を隠しきれず、小さく歓声をあげてしまった。すくなくとも十回は読んだお気に入りの小説だ。

授業のあいだは話しかけてこなかったくせに、ハーディンが近づいてきた。無関心を装うその目を見ただけで、何を言われるのか予想がつく。

 

次回、ハーディンに翻弄されるテッサは、ボーイフレンドのノアのことがうざったく感じてしまいます。そんな時、またもや週末のパーティーに誘われるのですが、ステフからハーディンの本性を聞かされて……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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