【連載15:AFTER】ご…ごめんなさい、あの…!「禁断の部屋」で泣き叫ぶ処女の告白

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<真実か挑戦か>ゲームで、ハーディンとのキスをモリーから強要されそうになり逃げたテッサですが、ゲームで飲まされたウォッカの影響か、ハーディンのことばかり考えてしまいます。

そして、自らの意思で行き着いた先は、“ハーディンの寝室”。そこに置いてあった『嵐が丘』を読みふけるテッサは、ドアが開き、誰かが入ってくる音に気がつかなかったのでした(前回)。

 

■なぜ、わたしを好きになってくれないの?

「“この部屋は出入り禁止”と書いてあるのに、どの部分が理解できなかったんだ?」

ハーディンの大声が響く。怒っている表情は怖いけど、どこかおかしくもあった。

「ご、ごめんなさい……あの……」

「出ていけ」吐き出すような言葉に、わたしは彼をにらみつけた。ウォッカの影響がまだ残っていて、怒鳴られたままでいるつもりなどなかった。

「そんなに意地悪なことばかり言わなくてもいいでしょ!」思った以上に大声で叫ぶ。

「入るなと言い渡してあるのに、きみはおれの部屋にまた入ってきた。だから、出ていけと言ってるんだ!」ハーディンは怒鳴りながら近づいてきた。

軽蔑するような目で見下ろされ、自分がこの世で最悪の人間みたいな気にさせられたせいで、わたしのなかで何かがキレた。わずかに残っていた冷静さを失い、頭にあったものの、ずっと避けてきた質問をしてしまった。

「なぜ、わたしを好きになってくれないの?」ハーディンを見ながら問いつめる。

とくにおかしい質問ではない。でも、すでに傷ついているわたしのプライドが彼の答えを受け入れられるとは、とても思えなかった。

 

■泣き叫ぶテッサ

ハーディンがこちらをにらむ。けんか腰だけど、どうしたらいいかわからないといった目つき。「なぜ、そんなことをきく?」

「わからない……だって、こっちは感じよく接してるのに、あなたはただ無礼なだけだし。実は友達になれるかも、と思ったときだってあったのに」自分でもばかげた台詞に聞こえて、鼻のつけ根を指で押さえながら彼の返事を待った。

「おれたちが? 友達?」ハーディンはお手上げだとばかりに笑い飛ばした。「そんなの、なれるわけがない。わかりきったことだろう?」

「わたしにはわからない」

「まず、その堅苦しいところだ—きみは同じような家が立ち並ぶ住宅地で、絵に描いたような理想の家庭で育ったんだろうな。きみにねだられたら、両親はなんでも買ってくれて、何不自由ない暮らしをおくってきた。プリーツスカートなんかはいちゃってさ。十八歳でそんな格好するやつがどこにいるんだよ?」

驚きに目が丸くなる。「何も知らないくせに、ばかにしないで! わたしの人生はそんなものじゃなかった! わたしが十歳のとき、アルコール依存症の父は出ていった。母は、娘が大学に行けるよう必死に働いたのよ。わたしだって家計を助けるために、十六歳になってすぐ働き始めた。プリーツスカートは好きだからはいているの!

あなたのまわりの女子みたいに、売春婦紛いの服装じゃなくて悪かったわね! 人と違った格好や言動をして目立とうと躍起になるくせに、自分と違う人間に対しては勝手に決めつけて批判するなんて傲慢よ!」そう叫ぶと、涙が目にあふれてきた。

こんな姿をハーディンの目に焼きつけたくない。くるりと背を向けたものの、彼が両手を拳に握っているのが見えた。なんだか怒っているみたいだ。

「いずれにせよ、あなたと友達になんてなりたくない」わたしはドアノブに手をかけた。さっきはウォッカが勇気をくれたのに、こんなふうに怒鳴り合うこの状況がやけにさみしい。

「どこへ行くつもりだ?」予想外の質問。ひどく不機嫌な声だ。

「バス停に行って、寮に戻る。もう二度とここには来ない。あなたたちと仲良くしようとするのはもうむり」

「ひとりでバスに乗るには遅すぎる」

ぱっと振り向き、ハーディンをにらんだ。「本心から心配してるんじゃないくせに」そして、やけくそで笑った。もう、彼の気分の変化にもついていけない。

「心配してるんじゃない……警告してるだけだ。やめたほうがいい」

「だって、ほかに選択肢がないもの。みんな酔っぱらってる—わたしも含めて」

つぎの瞬間、涙が出てきた。よりによって、ハーディンに見られるなんて。しかも、これで二度目だ。

 

■ハーディンの唇の味!?

「きみは、パーティーに来るといつも泣くのか?」ひょいと頭を下げた彼は笑っているようだった。

「あなたがいるパーティーではね。行ったことがあるのは、この二回だけだから……」わたしはふたたび手を伸ばして、ドアを開けた。

「テレーサ」低く優しい声だったので、もうすこしで聞き逃すところだった。彼の表情がぜんぜん読めない。またしても部屋がぐるぐる回り始めて、わたしはドア近くにあるドレッサーの端をつかんだ。「大丈夫か?」と尋ねられて、吐き気をこらえてうなずいた。

「すこし座ったほうがいい。バス停に行くのはそれからにしろ」

「あなたの部屋には、何人(なんぴと)たりとも入っちゃいけないと思ったけど」

床に座りこんでしゃっくりを始めると、ハーディンはすぐに怖い顔をした。「おれの部屋で吐いたりしたら……」

「水が欲しいだけよ」

「ほら」彼は、立ちあがろうとするわたしの肩を押さえて座らせ、赤いカップを渡してくれた。

冗談でしょ。わたしはそれを押しやった。「水って言ったのよ。ビールじゃないわ」

「水だ。おれは、酒は飲まない」

笑いのような、驚きに息をのむような声が出てしまった。ハーディンがお酒を飲まないなんて、まさか。

「すっごくおかしい、爆笑ものね。ここに座って面倒見てくれるわけじゃないでしょ?」

わたしはひとりでくだを巻いていたかった。ほろ酔い気分もさめて、ハーディンを怒鳴ったのが後ろめたくなる。「あなたは、わたしのなかの最悪の部分を引きだすのよ」なんの気なしについ、つぶやく。

「ひどい言われようだな」彼の口調にふざけているところはなかった。「いや、ここに座って面倒を見る。きみは生まれて初めて酔っぱらってるし、おれがいないところで勝手に物をいじるくせがあるから」ハーディンはベッドに腰を下ろして脚を投げ出した。

わたしは立ちあがってカップをつかみ、ごくごく飲んだ。かすかなミントの味に、彼の唇はどんな味がするのか想像してしまう。飲んだ水が胃に到達すると、焼けるような感覚がすこしおさまった。

もう二度とお酒なんか飲まない。床に座りながら、自分に言い聞かせた。

しばらく沈黙が続いたのち、ハーディンが口を開いた。「質問してもいいか?」

彼の表情を見れば、ノーと言うべきだった。でも、部屋はまだぐるぐるしているし、話をしたら気分もましになるかもしれない。「どうぞ」

 

次回、ふたりきりの部屋で打ち解けてくるテッサとハーディンだが、やはり仲違いしてしまいます。ハーディンに水入りのコップを投げつけたテッサが向かった先は、イケメンなゼッドのグループ。テッサがゼットから、肩に腕を回されているところを目撃したハーディンは……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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