【連載18:AFTER】こんなの初めて…「脳の機能が停止して」駆け抜ける衝撃と興奮

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酔っぱらった男子に犯されそうになったテッサは、ハーディンの部屋に逃げ込みます。酔っぱらいにいいようにされるより、ハーディンに批難されるほうがよっぽどましましと考えたのです。

「泣くな、テス」

いつになく優しいハーディン。唇を見つめると、自制心と欲望がせめぎ合いますが、やがて自制心が負け、ふいを突くように、テッサはハーディンに口づけしたのでした(前回)。

 

■こんなキスをしたのは初めてだ。

何をしているのか自分でもわからなかったけど、もう抑えられなかった。唇を重ねると、ハーディンは息をのんだ。彼の唇は想像したとおりの味だった。舌先でかすかにミントの味を感じていると、彼は口を開けてキスを始めた。

唇に触れるだけじゃない、ほんとのキス。温かな舌でそっと舌をなぞられ、ほほに口ピアスの冷たい感触がしたとたん、火がついたように全身が熱くなる。こんなふうに感じたのは初めてだ。

彼は片手でわたしのほほをそっと包んでから、両手を腰に回してきた。それからすこし後ろに下がり、わたしの唇に軽く口づける。

「テス」彼はささやくように言うとすぐに唇を重ね、また舌を差しいれてきた。その瞬間、わたしの脳は機能を停止した。駆け抜ける衝撃と興奮に全身から力が抜ける。

ハーディンは腰をつかんでわたしを引き寄せながら、キスを続けたままベッドに横たわった。どうしたらいいのかわからず、わたしは両手を彼の胸板にそっと当てて胴にまたがった。彼の肌は熱く、荒い息遣いで胸が上下している。

唇が離れたことに抗議の声をあげようとすると、いつの間にかそれはわたしの首筋に触れていた。ハーディンはわたしの髪をつかんで頭を動かないようにしながら、うなじにキスを続けた。

かすめるような舌を追いかけて、せつない吐息が肌の上を走る。鎖骨を歯でなぞられ、わたしはうめき声をもらした。肌をそっと吸われるたびに、快感が全身を貫く。ハーディンやアルコールに酔っていなかったら、恥ずかしくてたまらなかっただろう。

こんなキスをしたのは初めてだ。ノアが相手のときだって、こんなことはなかった。

ノア!

「ハーディン……やめて」自分のものとは思えない、低くかすれた声。口のなかがからからだ。

でも、彼はやめなかった。

「ハーディン!」きっぱり言い放つと、彼はつかんでいた髪を放した。欲望にけぶっているが、さっきの荒々しさがすこし薄れた瞳。唇は、キスを続けていたせいでピンク色に腫れている。「だめよ」このままキスしていたいけど、やっぱりできない。

 

■ただのキスだ。

ハーディンの目から穏やかさが消えた。わたしをベッドの端に追いやるようにして、彼が体を起こす。何、どういうこと?

「ごめんなさい、悪かったのはわたしだわ」これ以外に言葉が思い浮かばない。いまにも胸から心臓が飛び出そうだ。

「悪かった、って何が?」ハーディンはドレッサーのところへ歩いていき、黒のTシャツを頭からかぶって着た。ボクサーパンツを見ると、前の部分がひどくきつそうだ。

わたしは顔を赤くしながら目をそらした。「あなたにキス……」と言ったものの、心のなかでは謝罪などしたくなかった。「どうして、あんなことしたのかわからない」

「ただのキスだ。特別なことじゃない」

なぜか、ハーディンの言葉に胸が痛くなる。彼がわたしとは違う気持ちでいるのが気になるわけではない……ちょっと待って、わたしの気持ちって何? 彼のことなんか好きじゃない。酔っているせいで、魅力的に見えるだけ。ひと晩じゅうお酒を飲み続けたから、キスしたくなっただけだ。

でも、こんなことがまた起こってほしいと心の奥でつぶやく声を、わたしは必死で抑えた。ハーディンは、酔っぱらいのおふざけに調子を合わせてくれただけだ。

「じゃあ、このことではふたりとも大騒ぎしないよね?」バラされたら、恥をかくことになる。いまのわたしはわたしじゃない。パーティーで酔っぱらったり、ボーイフレンドを裏切ったりするような人間じゃなかったはずだ。

「心配するな、おれだってこんなこと知られたくない。もう、こんな話はやめろ」

傲慢で偉そうな態度がかえってきた。「そうやってまた、いつものあなたに戻るわけね」

「いつものおれ、とかなんだよ? きみがおれにキスをした—しかも無理やり—だからといって、特別な絆ができたわけじゃないからな」

無理やり? わたしの髪をつかんだ手、キスする前にささやいた“テス”という声を、いまもはっきり覚えているのに。

わたしは弾かれたようにベッドを下りた。「あなたが止めればよかったじゃない」

「逆ギレするなよ」嘲るような返事に、またしても泣きたくなる。彼のせいで感情がコントロールできない。無理やりキスされたと思われるなんて恥ずかしすぎて、わたしは両手で顔を覆ったままドアのほうへ向かった。

「今夜は行くところがないんだろ。ここにいればいい」ハーディンがつぶやいたけど、わたしは首を横に振った。そばになんていたくない。これもぜんぶ、彼のかけひきの一部だ。部屋にいてもいいと言って、自分がまっとうな人間と思わせたつぎの瞬間、わたしの額にいやらしい落書きをしたりするにきまってる。

「いいえ、結構よ」わたしは部屋を出た。名前を呼ばれたような気がしたけど、無視して階段まで歩く。外に出てひんやりした風を感じながら、いまやおなじみとなった石壁に座って、スマホの電源をいれた。

もうすぐ朝の四時。五時にはシャワーを浴びて、勉強を始めているはずだったのに、こんな暗がりでひとりきり、崩れそうな石壁に座っているなんて。

朝まで騒いでいた人たちがあたりを歩いている。どうしたらいいかわからず、スマホの画面をスクロールしていくと、ノアや母からのメールが延々と続いていた。やっぱり。彼が母に話したのだ。彼は、いつもこういうことばかりする……。

でも、ノアに腹を立てることもできない。さっき彼を裏切ったばかりのわたしに、そんな資格なんてあるわけがない。

 

ついにキスをしてしまったハーディンとテッサ。次回、緊迫! テッサの部屋にて、テッサとハーディンが急に訪れたお母さん、ノアと対面し……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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