【連載20:AFTER】え…どうしたの?みんなの見てる前で「彼氏とキス」する理由

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ハーディンの部屋から飛び出し、明朝、やっとのことで自分の部屋へ帰り着いたテッサをベッドで待ち受けていたのは……なんとハーディン! 心配で一晩中探しまわったといいます。そこに、怒り心頭で乗り込んできたのは、お母さんとボーイフレンドのノア(前回)でした。

テッサのお母さんとハーディンの壮絶なバトルがはじまります。

 

■それは、うそだった

「お母さん」わたしは歯を食いしばりながら言った。

なぜかはわからないけど、ハーディンを擁護しようとしていた。いまの母の態度が、わたしが彼に初めて会ったときとそっくりなせいかもしれない。ノアはわたしを見てからハーディンに視線を移し、またこちらを向いた。

わたしがハーディンにキスしたばかりだと、バレただろうか? そう思っただけで感触がよみがえり、肌がちりちり熱くなる。

「テッサ、あなたは自分を見失ってる。ここからでも酒臭いのがわかるわ。もっとも、それはあのかわいいルームメイトと彼の影響でしょうけど」母は非難がましくハーディンを指した。

「お母さん、わたしはもう大人よ。いままでお酒を飲んだこともないし、間違ったことだってしてない。ほかの大学生がするようなことをしてるだけ。スマホの電源が切れてたことや、わざわざ車を飛ばしてきてくれたのは申し訳ないと思うけど、ほんとにだいじょうぶだから」

この数時間の疲れがどっと押し寄せてきて、勉強机の椅子に座りこむ。あきらめて従うようなわたしの態度に、母も冷静さを取り戻したようだ。あれこれ嫌味は言うけど、娘をいじめたいだけのモンスターでは決してない。母はハーディンのほうを向いて言った。「ねえ、ちょっと私たちだけにしてくださる?」

ハーディンは、だいじょうぶかと尋ねるような目でこちらを見た。わたしがうなずくと、わかったというように彼もうなずいて部屋を出ていった。ノアは彼からずっと目を離さず、すぐにドアを閉める。

ハーディンとわたしがタッグを組んで母とボーイフレンドに相対(あいたい)するなんて、変な感じ。根拠はないけど、ハーディンはドアの外で待っていてくれるような気がした。

それから二十分間、母はわたしのベッドに腰かけたままお説教を続けた。すばらしい教育の機会を無駄にするのではないかと心配だとか、もう二度とお酒は飲んじゃだめだとか。それに、ステフやハーディン、その仲間たちとつるむのは賛成しないとも。彼らとはつき合わないよう約束しろと言われて、わたしは同意した。

ゆうべみたいなことがあった後では、どのみちハーディンのそばにはいたくないし、ステフとパーティーに行くつもりもない。彼女と仲良くしているかどうかなんて、母にわかるはずもないし。

ようやく母は立ちあがると、安心したように両手を合わせた。「せっかく来たんだから、朝食を食べに行きましょう。ショッピングするのもいいわね」

わたしがうなずくと、ドアに寄りかかっていたノアもほほ笑んだ。名案だと思ったし、実際、お腹がぺこぺこだった。アルコールと疲れのせいでまだ頭がよく働いていないけど、歩いて寮に帰ってきてコーヒーを飲み、母から説教されたせいで酔いもさめた。ドアに向かうと、母が咳払いをした。

「顔でも洗って、ちゃんと着替えなさい。まったくもう」といかにも偉そうに言う。わたしは洗濯してある洋服を取り出して着替えた。ゆうべのままのメイクをすこし手直しして、準備完了だ。

ノアがドアを開けてくれて、三人で部屋の外へ出ると、ハーディンは向かいの部屋のドアにもたれて座っていた。彼が顔をあげるのと同時に、ノアはわたしを守るかのように手をぎゅっと握った。

なのに、わたしはその手を引き抜きたくなった。

「三人で街に出かけるの」

わたしの言葉にハーディンは、自分のなかの疑問に答えるように何度かうなずいた。その姿はどこか傷ついているようにも見えた。こんなのは初めてだった。

彼はあなたのプライドを傷つけたのよ、と心の奥でささやく声がする。たしかにそうだ。でも、ノアに手を引かれてハーディンの前を通りすぎながら、わたしは後ろめたさを感じた。母の勝ち誇ったような笑みに、彼は目をそらした。

「ほんとうにいやなやつだな」ノアの言葉にわたしもうなずく。

「うん、そうね」

だけど、それはうそだった。

 

■みんな見てる前でキス?

ノアや母といっしょの朝食は、いやになるほど長く感じられた。母はわたしの“ワイルドな一夜”をあげつらい、疲れてないか、二日酔いじゃないかと始終きいてきた。

たしかにゆうべは柄にもないことをやったものの、何度も言われる筋合いはない。母は昔からこんな人だった? よかれと思ってやっているのだろうけど、わたしが大学に入ってからひどくなってる気がする。もしくは、わたしのほうが独り立ちして一週間経ち、新たな目で母を見るようになったせいかもしれない。

「買い物はどこへ行く?」パンケーキをほおばりながら尋ねるノアに、わたしは肩をすくめた。来たのが彼だけなら、ふたりでゆっくり過ごせたのに。わたしのこちらでの生活について、とりわけ悪いことをいちいち母にチクらないよう言う必要があったし、ふたりきりなら、そういう話もしやすかっただろうに。

「近くのモールにでも行きましょうか。このあたりのことはまだ、よく知らないの」

フレンチトーストの最後の一切れを切り分けながら答えた。

「どこでバイトするか、考えた?」とノアが質問してくる。

「まだわからない。本屋さんとか? 出版や執筆業に関係したインターンシップが見つかるといいんだけど」と答えると、母は誇らしげな笑顔を見せた。

「それはいいわね。大学卒業まで働けて、そのままフルタイムの社員に雇ってもらえるようなところ」と言ってまた、ほほ笑む。

「うん、そうなったら理想的」皮肉を抑えて返事をしたけど、ノアにはバレたようだ。

彼は、だめだよと言うように、テーブルの下でわたしの手を握った。

フォークを口に運びながら、ふとハーディンの口ピアスを思い出して一瞬、手が止まる。ノアはそれを見逃さず、問いかけるような目でこちらを見た。ハーディンのことを考えるのはやめなくちゃ。わたしは笑顔を作り、握られた手を持ちあげてキスをした。

朝食を終えると、母の運転する車でベントン・モールへ行った。巨大なモールで、すごい人ごみだ。

「私は〈ノードストローム〉へ行くわ。終わったら電話する」と言われて、わたしはほっとした。ノアとまた手をつないで、いろんな店を見て回る。金曜のサッカーの試合で決勝点を挙げたことを話す彼に熱心に耳を傾け、よかったねと返事をした。

「きょうの格好はすてき」と言うと、ノアはにっこりした。白くて完璧な歯がまぶしい。栗色のカーディガンにカーキパンツ、ローファーという格好。ハーディンには、ノアはローファーなんて履かないとうそをついたけど、やっぱり彼の人柄に合っている。

「きみもだよ、テッサ」と言われて、ちょっとげんなり。ひどい見た目なのは自分でもわかってるのに、ノアが見え見えのお世辞を言うからだ。ハーディンだったら、間髪いれずに事実を指摘するだろうに。うわ、ハーディンですって? わたしはミスター無礼者を頭から振り払いたくて、ノアのカーディガンの襟をつかんで引き寄せた。

でも、キスしようとすると、彼はほほ笑みながら体を引いた。

「何してるの、テッサ? みんな見てるよ」と、ニューススタンドでサングラスを試している一団を手振りで示す。

 

次回、ノアとハーディンのキスを比べてしまい自己嫌悪に陥ったテッサがノアに伝えたこととは…!? そして、ハーディンの父親の意外な秘密が明らかに!

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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