【連載21:AFTER】とにかく…お願いだからキスして!「ゆうべはあなたを裏切ったの」

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朝帰りした上に、不良のハーディンが同じ部屋に……そんな最悪な状況でお母さんとボーイフレンドのノアが突然訪問してきて、大ピンチに陥ったテッサ。

散々説教されましたが、その後、ノアと久しぶりにデートすることになります。そして、ハーディンとのキスを頭から振り払うため、ノアにキスしようとするのですが……(前回)?

■ノアとの約束

わたしはおどけるように肩をすくめた。「見てないわよ。何が問題?」気にすることなんかない。いつもなら、わたしも人目をはばかるけど、いまはノアにキスしてほしかった。

「とにかく、お願いだからキスして」

なりふりかまわない感じなのが、目を見てわかったのか、彼はわたしのあごをくいと上げてキスをした。優しくゆったりとして、急き立てられるような激しさなどまるでないキス。舌が触れるか触れないかのうちに終わってしまったけど、悪くはない。

ありふれた、いつものキス。わたしは体のなかに炎が燃えあがるのを待ったが、そんなものは起こらなかった。

ふたりを比べることなんてできない。ノアは、わたしの愛するボーイフレンド。ハーディンは日ごとに女を取り替えるクズだ。

「いったいどうしたの?」ノアは、彼の身体を引き寄せようとするわたしに言った。思わず顔が赤くなり、首を横に振る。「なんでもない。ただ、あなたが恋しかっただけ」ああ……それにね、ゆうべはあなたを裏切ったの。心のなかでつぶやく声がしたけど、取り合わずに続けた。

「ねえ、ノア、わたしのすることをいちいち母に話すのはやめてくれない? すごく居心地悪い。あなたが母と仲良しなのはうれしいけど、告げ口されてるみたいで、自分が子どもになった感じがするの」胸のなかのつかえを吐き出すと、すこしすっきりした。

「テッサ、ほんとにごめん。とにかく、きみのことが心配だったんだ。これからはも
うしない。心の底から誓うよ」肩に腕をまわして額にキスしてくれるノアを、わたし
は信じることにした。

そのあとは午前中よりずっと楽しく過ごせた。最大の理由は、母にヘアサロンへ連れていかれて、毛先を揃えてレイヤーをいれてもらったからだ。背中につくほどの長さは変わらないけど、ふんわりボリュームが出てすごくすてき。寮へ帰る車中でもノアがずっとほめてくれて、テンションが上がった。

わたしはタトゥーを入れた人間の半径百マイル以内には近づかないともう一度約束してから、寮の玄関でふたりと別れた。誰もいない部屋に戻ると、ちょっとさみしかったが、ステフやほかの誰かの顔を見たいかと言われれば、それも違うような気がした。

靴を脱ぐのもそこそこに、ベッドで横になる。もうくたくたで、寝ないととても無理だった。その晩はもちろん、翌日曜日の昼過ぎまで眠った。目が覚めると、ステフは自分のベッドで寝ていた。日曜は、起きてからずっと図書館で勉強した。

部屋に戻っても彼女の姿はなく、月曜の朝になってもまだ戻ってこなかった。週末のあいだ彼女が何をしていたのか、わたしは気になってしかたなかった。

 

■ハーディンのお父さんって……!?

最初の授業に行く前にコーヒーを買おうとカフェに寄ると、ランドンが笑顔で待っていた。朝の挨拶を交わしたものの、面倒な道順を尋ねてきた女子がいたので、お互いの近況報告ができたのは、その日最後の授業に向かって歩いているときだった。わたしがずっと怖れていた、でも楽しみにしていた授業だ。

「週末はどうだった?」ランドンの質問に、思わずため息が出る。

「最悪。またしてもステフとパーティーに行っちゃったの」と答えると、彼は苦笑した。

「あなたのほうがずっと楽しい週末だったでしょう? ダコタはどうだった?」

彼女の名前を聞いたとたんに笑みを深めるランドンを見て、気づいた。そういえば、土曜にノアに会ったことをわたしは言わなかった……。ダコタはニューヨークのバレエ団に入りたいそうで、ランドンは彼女のためにもうれしいと言う。わたしのことを話すノアは、こんなふうに目を輝かせてくれるだろうか。

教室に入るときもランドンは、父親と継ステップマザー母が彼の帰省を喜んだと話してくれたが、わたしは教室内を見回すのに忙しくて、ちゃんと聞いていなかった。ハーディンの席は空いていた。

「ダコタがそんな遠くに行ったら、たいへんじゃない?」席に座りながら、ようやく質問する。

「いまでも遠距離恋愛だけど、うまくいってる。ぼくは、彼女にとってベストな状況を望んでいるだけだ。それがニューヨークなら、ぜひとも行ってほしいと思うよ」

教授が入ってきて、みんな静かになった。ハーディンはどこ? わたしを避けるためだけに、彼が授業をサボるなんてことはないはずだ。

でも、みんなに読んでほしい魅惑的な小説、『高慢と偏見』の世界にいったん入りこむと、あっという間に授業は終わっていた。

「髪を切ったんだな、テレーサ」振り向くと、後ろでハーディンがにんまりしていた。彼とランドンが気まずそうに顔を見合わせるなか、わたしはなんと返事をしようか考えた。まさか、キスしたことをランドンの前でぶちまけたりしないよね? でも、いつものように深いえくぼを見てわかった。彼が黙っているはずなどない。

「あら、ハーディン」

「週末はどうだった?」彼は妙に澄ました顔で言った。

「最高だった。じゃあまたね!」ランドンの袖を引っぱりながらわたしがひきつった顔で答えるのを見て、ハーディンはげらげら笑った。

外へ出ると、ランドンに質問された。「いまの、何?」

「なんでもない。ハーディンが好きじゃないだけ」

「でも、きみは、そんなにしょっちゅう彼とは会わないだろ?」

なんだか引っかかる言い方。どういうこと? わたしが彼にキスしたのを知ってるの?

「えっと……そうね、ありがたいことに」

ランドンは口ごもった。「ハーディンとぼくを結びつけて考えられるのはいやだから、黙ってるつもりだったけど……」とためらいがちにほほ笑む。「ハーディンのお父さんが、ぼくの母とつき合ってるんだ」

「えっ?」

「ハーディンのお父さんが—」

「ああ、うん、それはわかった。でも、お父さんはここに住んでるの? なんでハーディンは—彼はイギリス人だと思ったけど? どうして親子いっしょに住まないの?」自分を抑えられぬまま、ランドンを質問攻めにする。彼はまだ困惑した表情だったが、さっきのぎこちなさは薄れていた。

「ハーディンはロンドン出身だよ。彼の父親とぼくの母はキャンパス近くに住んでるんだけど、ハーディンは父親と折り合いが悪いんだ。この話は、彼には言わないでくれる? ぼくと彼も仲がいいわけじゃないから」

「うん、わかった」さらに質問が千個ほど浮かんだものの、わたしは黙ったまま、ランドンが目を輝かせながらダコタの話をするのをじっと聞いた。

 

次回、ハーディンに壁に押し付けられ、強引にキスされてしまうテッサ。そのとき彼女が感じたこととは……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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