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【連載28:AFTER】嫉妬で連れ出され…ふたりきりのドライブ「とにかく好きなの!」

2016/02/19 21:00  by   | デート

「今夜はおれとデートだぞ」。いつになくご機嫌なセリフのハーディンでしたが、自分の父親とライドンの母親の関係をテッサが知っているとわかると急に不機嫌に……。「やっぱり、やめだ」。

困惑したテッサが寮の部屋に戻ると、ゼッドとトリスタン、ステフがベッドに座っていました。そこに突然ハーディンがあらわれ、「みんなで映画に行く」と聞くと、「テッサとおれは予定がある」と言い放ったのです(前回)。

 

■折れたハーディン

「ふたりで出かけるので、迎えに来たんだ」ハーディンは立ちあがって両手をポケットに突っこむと、身振りでドアのほうを示す。「準備できたか?」

いいえ! 頭のなかではそう叫んでいたのに、わたしはうなずいてステフのベッドから下りていた。

「じゃ、またあとでな!」ハーディンは、わたしをドアの外へ文字どおり押し出した。先に立って車のところまで行き、驚いたことに助手席のドアまで開けてくれる。わたしは腕組みをして彼をじっと見た。

「ふん、そうか。もう二度とドアを開けてやらないからな……」

あきれて、わたしは首を横に振った。「いったい、どういうつもり? 迎えに来たわけじゃないのはわかってる—わたしとはつき合いたくないって言ったばかりでしょ!」

また、怒鳴り合うふたりに戻ってしまった。大げさな意味じゃなく、彼のせいで頭がどうにかなりそうだ。

「違う、おれはきみを迎えに行ったんだ。さあ、車に乗れ」

「いやよ! ここで認めないなら、部屋に戻ってゼッドといっしょに映画に行くから」そう言うと、ハーディンが歯を食いしばった。

やっぱりね。どう受けとめていいのかわからないけど、ハーディンは、わたしがゼッドと映画に行ってほしくないと思っている。いま、わたしを連れ出そうとしている理由はそれだけだ。

「認めなさいよ、ハーディン。じゃないと、帰るわよ」

「オーケー、わかった。認めるよ。いいから、さっさと車に乗れ。これで最後だぞ」

彼は車の前を回って運転席に座る。

やめたほうがいいという心のなかの声を無視して、わたしも乗りこんだ。

 

■たどり着いた場所

ハーディンは怒った顔のまま駐車場から車を出し、キンキンした音楽のボリュームをいっぱいに上げる。わたしは手を伸ばしてスイッチを切った。

「おれのカー・オーディオに触るな」

「そうやっていつまでもすねるなら、あなたとはつき合いたくない」彼が態度を改めないなら、その場で車を降りて、ヒッチハイクで寮まで帰ってやる。

「わかったよ。とにかく、カーラジオには触るな」

ルーズリーフをばらばらにされたときを思い出して、仕返しにラジオを窓の外に放り出してやりたくなる。ダッシュボードから取り外す方法を知っていたら、絶対にそうしていただろう。

「なんで、わたしがゼッドと映画に行くのを気にするの? ステフやトリスタンもいっしょなのに」

「ゼッドがよからぬことを考えているような気がしたからだ」ハーディンは道路を見つめたまま静かに言った。

わたしが笑いだすと、彼は顔をしかめた。「へえ、そういうあなたはどうなの? すくなくとも、ゼッドはわたしに失礼なことを言ったりしないけど」どんな形であれ、ハーディンがわたしを守ろうとするなんて爆笑ものだ。ゼッドはただの友達。ハーディンと同じだ。

彼は目をそらし、質問には答えなかった。音楽のボリュームをまた上げられて、ギターとベースが耳に痛いほどだ。

「音量を下げてくれない?」

意外にも彼はそのとおりにしたが、バックグラウンド・ノイズとして流したままにする。

「ひどい音楽」

彼は声をあげて笑い、ハンドルをリズミカルに指でたたき始めた。「そんなことはない。もっとも、きみが思う“いい”音楽ってのがどんなものか聞きたいとは思うが」

こんなふうに笑うハーディンは屈託なく見えた。下ろした窓から入る風に髪がなびいているときはとくに。彼が片手をあげて髪をかきあげる。おでこを出してるほうがわたしは好き。そんな思いを、頭を振って追い払った。

「そうね、フォークロック・バンドのボン・イヴェールとか、ザ・フレイとか」

「やっぱりな」ハーディンがくすくす笑う。

「何がおかしいの? めちゃくちゃ才能があって、すてきな音楽を生み出す人たちよ」

「ああ……確かに才能はあるな。聞いてる人間を眠らせる才能が」

ふざけてハーディンの肩をぶつと、彼は大げさに顔をしかめて笑った。

「とにかく好きなの!」こんなふうにふたりではしゃいだままでいられるなら、楽しく過ごせるかもしれない。「ねえ、どこへ行くの?」

「おれの好きな場所だ」

「それって……?」

「なんでもかんでも、前もって知らないと気がすまないんだな」

「そうよ……だって—」

「すべてをコントロールできるように、か?」

言葉が出ない。そう、彼の言うとおりだ。でも、それがわたしなんだもの。

「着くまで教えない……あと五分くらいだ」

レザーシートの背もたれに体を預け、ちらと後部座席を見る。教科書やばらばらのレポート用紙がぐちゃっと片方に積みあげられ、もう一方には厚手の黒いトレーナーがあった。

「気になるものでも見つけたか?」ハーディンに見つかり、ばつが悪くなる。

「これってどういう車?」どこへ行くのかわからない不安と、詮索しているようなところを見つかったことから気をそらそうとした。

「フォード・カプリ—名車だ」彼は得意げに鼻を膨らます。滔とう々とうと説明してくれたけど、さっぱりわからない。とはいえ、車のすばらしさを語りながらゆっくり動く唇を見ているのは楽しかった。会話の合間に何度かこちらを見てから、ハーディンが言う

「じろじろ見られるのは好きじゃない」口調はきつかったものの、彼は、すぐにほほ笑んだ。

砂利道に入ると、ハーディンは音楽を切った。聞こえるのは、タイヤが小石を踏む音だけ。まわりに何もないことに気づいて、落ち着かなくなる。彼とふたりきり、ほかに誰もいない。車も建物も、なんにもなかった。

「心配するな。人気(ひとけ)のないところに連れ出して殺そうってんじゃない」ハーディンの冗談に思わず息をのむ。そんなことより、彼とふたりきりになったときに自分が何をするのかわからないのが怖いのに。

 

次回、ハーディンがテッサを連れて行った先にあったものは!? 「ここでブラとパンティになれよ」

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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