【連載30:AFTER】もう止まらない「瞳孔がすっかり開いて」おれに何をした!?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存

ハーディンがテッサを連れて行ったのは、なんと川。しかも、水着がないというテッサに、「ブラとパンティになれ」と言い放ちます。最初は拒んでいたテッサでしたが、ハーディンから「質問になんでも答えてやる」と言われ、ついに入る決心をするのです。

下着ではなく、ハーディンのTシャツを借りることになったのですが、その姿にハーディンはなぜか興奮している様子……(前回)?

 

■水の中のハーディンとテッサ

「えっと……水のなかに入るか?」いつもよりかすれた声。わたしはうなずいて、ゆっくり岸に歩いた。「とにかく飛びこめ!」

「わかった! わかったってば!」どぎまぎしながら叫ぶと、ハーディンはけらけら笑った。

「すこし助走をつければいい」

「オーケー」すこし下がって走り出す。自分でもばかみたいと思ったものの、考え過ぎてダメにしたくない。でも、あと一歩で飛びこむという瞬間に水面を見てしまい、岸の端ぎりぎりのところで足が止まった。

「なんだよ! 走り出しはいい感じだったのに!」頭をのけぞらせて笑うハーディンがかわいく見えた。

ハーディンが、かわいい?

「無理、できない!」なぜ止まったのか、自分でもわからない。飛びこんでも大丈夫な深さだけど、深すぎるわけじゃない。ハーディンが立っているところでも、せいぜい胸のあたりまで。ということは、わたしのあごの下ぐらいだろうか。

「怖いのか?」低くまじめな声できかれた。

「ううん……わからない。まあ、すこしは」正直に言うと、ハーディンは水中を歩いてきた。

「岸に座れよ、手を貸してやる」

わたしは腰を下ろし、パンティが見えないよう脚をきつく閉じた。それに気づいたのか、彼はにやりとしながら手を伸ばしてきた。腿をつかまれると、全身が燃えるように熱くなる。

なぜ、こんなふうに反応してしまうのだろう。友達になろうとしてるんだから、こんなのは無視しなければ。彼は両手をわたしの腰に添えた。「いいか?」

うなずいたとたん、体を持ちあげられて川のなかに引きずりこまれた。熱い肌に触れる水が心地いい。ハーディンがすぐに手を離したので、わたしは水中に立った。まだ岸に近いところだったので、胸のすぐ下ぐらいの深さだ。

「突っ立ったままでいるなよ」茶化すように言われたのを無視してすこし歩くと、水のなかでTシャツの裾がふわっと持ちあがる。わたしは悲鳴とともにそれを引きおろした。最初に位置を直すと、あとはだいじょうぶだった。

「面倒なら脱げばいいのに」にやにやしながら言うハーディンに、水しぶきをかける。

「よくもやったな」おもしろがる彼に向かって、もう一度水をかけた。彼は濡れた顔を振り、水に潜ってこちらに向かってきた。長い腕でわたしの腰をつかんで引きずりこもうとするので、シャツをつかんでいた手を離して、鼻をつまんだ。鼻クリップなしでの泳ぎはできない。

水から顔をあげると、ハーディンが大笑いしているので、わたしもいっしょになって笑った。心配していたけど、いまのところは楽しく過ごせている。いい映画を見てまあまあおもしろかったとかいうレベルではなく、心の底からほんとうに楽しい。

「きみが楽しそうにしてるのと、水のなかでは鼻をつままないといけないこと。どっちがより愉快だろうか?」彼は笑いながら言った。

ふいに気が大きくなり、Tシャツの裾がまた持ちあがるのもかまわずハーディンに近づき、頭を水に沈めてやろうとした。でも、当然ながらわたしの力ではびくともしない。彼は白くきれいな歯を見せて大笑いするばかりだった。どうして、いつもこんなふうでいてくれないの?

「質問に答えてくれるんじゃなかった?」

ハーディンは目をそらして岸辺のほうを向いた。「ああ、ひとつだけな」

あまりに多すぎて、何をきけばいいのかわからない。でも、心のなかでつぶやく声がそのまま出てしまった。「この世でいちばん愛しているのは誰?」

 

■おれに何をした、テス……?

なぜ、そんなことを質問したの? もっと具体的なことを知りたいのに。どうしてそんなにいやなやつなのか、とか。なぜアメリカにいるのか、とか。

質問に戸惑ったのか、ハーディンは不思議そうにこちらを見た。「おれ自身だ」そして、ちょっと水のなかに潜る。

ぱっと浮き上がってきた彼に向かって、わたしは首を横に振った。「そんなのあり得ない」と挑発するように言ってみる。彼が傲慢なのはわかってるけど、それでも愛する誰かがいるはず……ほんとにいないの?「ご両親は?」質問を口にした瞬間、わたしは後悔した。

ハーディンの顔がゆがみ、瞳から柔らかさが消えた。「両親のことは二度と口にするな。いいか?」嚙みつくように言われて、わたしは自分をぶってやりたくなった。いっしょに過ごした楽しいひとときを台無しにしてしまった……。

「ごめんなさい、ちょっと気になっただけ。でも、質問には答えるって言ったのに」と食い下がる。彼はすこし表情を和らげて近づいてきた。そのまわりにさざ波が立つ。

「ほんとにごめんなさい、ハーディン。もう二度と口にしないから」ここでけんかなんてしたくない。彼の機嫌を損ねたら、ここに置いていかれる。

ふいに腰をつかまれて、体が空に持ち上がる。脚をじたばたさせながら腕を振り回し、下ろしてと叫んだけど、ハーディンにそのまま放り投げられた。一メートルほど離れたところで水の上に顔を出すと、彼は笑ったまま、楽しげに瞳を輝かせていた。

「ひどい目に遭わせてやる!」と怒鳴ったのに、あくびのふりをされたので、彼のほうへ泳いでいった。また体をつかまれて—わたしはいつの間にか彼の腰に脚を巻きつけていた。ショックを受けた彼が息をのむ。

「ごめん」わたしはつぶやいて脚を解いた。

彼はわたしの両脚をつかんで腰にもう一度巻きつけさせた。ふたりのあいだにふたたび、強烈な興奮がびびっと走る。ううん、前よりずっと激しい。なぜ、ハーディンが相手だとこんなことがいつも起こるのだろうか。わたしはそんな思いをさえぎり、体を支えようと両腕を彼の首に回した。

「おれに何をした、テス」ハーディンは小声で言い、わたしの下唇を親指でかすめた。

「わ、わからない……」まだ唇をなぞる親指に向かって正直に答える。

「この唇で……どんなことができるか」ゆったりと誘うような口調。お腹のあたりの灼けるような感覚に、わたしは彼の腕のなかでとろけそうになった。「やめてほしいか?」彼がのぞきこんでくる。その瞳孔がすっかり開き、欲望にけぶる瞳は緑色の細いリングのようにしか見えない。

理性が追いつく前にわたしは首を横に振り、水のなかで体を彼に押しつけた。

「おれたちはただの友達になんかなれない。きみもわかってるだろう?」あごに唇を押し当てられて、体がぞくっとする。下あごをキスでたどられながら、わたしはうなずいていた。

ハーディンの言うとおりだ。この状態がどういうことかはわからないけど、彼とただの友達には絶対なれない。耳のすぐ下の柔らかなところを唇で触れられて、吐息がもれる。それを合図に、ハーディンはつぎにそっと肌を吸った。

 

ついに、お互いの欲望に正直になったテッサとハーディン。次回、求め合うように熱く絡み合うと、ハーディンが尋ねる。「ここがいいか? それとも、俺の部屋で?」

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

【関連記事】

これで一気読み!連載小説『AFTER』目次ページ

※ ヤダ…大興奮?「愛する彼氏がいても」恋に堕ちちゃう危険なキス

※ 【連載1:AFTER】すべて計画通り!「人生でもっとも大切な日」にオールAの彼氏

※ 【連載2:AFTER】え…なんで男子生徒が!? 「信じられないルームメイト」に大混乱

【連載3:AFTER】うそ…もしかして!? 悲劇「男女共同シャワー」で濡れちゃった

 

【姉妹サイト】

※ 休み明けのダラダラ脳に!「ヤル気スイッチ」を一瞬で押す魔法テク3つ

※ 2位紗栄子よりムカつく!最新版「イラッとするママタレ」1位は

 

AFTER(1) [ アナ・トッド ]

AFTER(1) [ アナ・トッド ]
価格:626円(税込、送料込)