【連載32:AFTER】何…いまのって?初めての絶頂経験「おれのためにいってくれ」

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「セックスするつもりはない」。ハーディンのいやらしい指の動きで、ついに初めてのオーガズムに達してしまったテッサ。絶頂の果てに、ふたりが向かう先とは……?

「何? いまのって……」なかばうめき声で尋ねる。彼は含み笑いするだけで答えてくれなかったが、もう一度同じことをされると、背中が草地から反り返った。

ハーディンの唇が首筋を這い、胸へと滑り下りてくる。ブラのカップのなかまで舌をしのばせて、手で胸を撫でさする。

わたしは下腹部に高まるものを感じた—天国にいるみたい。両目をぎゅっとつぶって、唇を嚙む。また背中が反り返り、脚が震え始めた。

「そうだ、テッサ、おれのためにいってくれ」そう言われて、自分を抑えていたものが弾け飛びそうになる。「おれを見ろ」

ハーディンのささやきに目を開けた。胸のあたりを嚙まれているのが見えた瞬間、目の前が真っ白になる。「ハーディン」と繰り返すと、彼のほほが赤くなった。こんなふうに呼ばれるのが好きみたい。

彼はゆっくり手を引き抜き、呼吸を整えようとするわたしのお腹の上に置いた。自分が生きていることを体の隅々まで実感したのは初めて。それに、これほどリラックスしたのも。

「落ち着くのに一分間だけやるよ」ハーディンはひとり笑って体を離した。

どうして? そばにいてよ。そう思ったのに、なぜか言葉が出てこない。人生で最高の数分間を過ごしたばかりなのに。起き上がって見つめると、彼はすでにジーンズを身に着け、ブーツを履いていた。

「もう帰るの?」わたしは困惑を隠せなかった。ハーディンも触ってほしいのかと思っていたのに。やり方を知ってるわけじゃないけど、教えてくれればできる。

「ああ、もうすこしここにいたいのか?」

「ううん、ただ……そうじゃなくて、あなたも……」どう表現したらいいのかわからなかったけど、ハーディンは気づいてくれた。

「ああ、そういうことか。いや、おれはいい。いまのところは」彼はちょっとほほ笑んだ。また、元の最低野郎に戻るつもり? あんなことがあったのに、それはいやだ。

人生でもっとも親密な体験を彼とともにしたばかりなのに、また酷い態度を取られたら、耐えられそうにない。いまのところは、ってことは、あとでという意味? わたしはすでに後悔しはじめていた。

濡れたブラとパンティの上から服を着ながら、腿のあいだの柔らかな部分が濡れていることには気づかないふりをした。ハーディンは濡れたシャツを拾って、こっちへ放ってよこす。

混乱した表情を見てとったのか「タオル代わりにして拭けよ」と言う。彼は、腿のつけ根の三角地帯にさっと視線を走らせた。

ああ、そういうこと。ジーンズのボタンを外して敏感な部分をシャツで拭くあいだ、彼はこちらを見ながら下唇を舌で湿していた。ジーンズのポケットからスマホを取り出し、画面を何度も親指でスワイプする。

わたしは言われたとおりのことを終えて、シャツを返した。靴を履くと、あんなに激しく情熱的だった空気がよそよそしく冷たいものに変わっていた。わたしは、ハーディンからできるだけ遠く離れたところに行きたくなっていた。

何か言ってくれるのを期待しながら車に戻ったものの、彼は黙ったままだった。これからどうなるのか、わたしはすでに最悪の事態を予想しはじめていた。車のドアを開けてくれたので、お礼の代わりにうなずく。

「どうかしたのか?」砂利道を車で戻りながら、ハーディンが尋ねてきた。

「べつに。あなたのほうこそ、どうしてそんなに変なの?」わたしは質問を返してしまった。答えが怖くて、まっすぐ彼の目を見られないというのに。

「変なのはきみのほうだ」

「違う。あなたはあれから黙ったままじゃないの……あの……」

「きみに初めてのオーガズムを体験させてから、か?」

口がぽかんと開き、ほほが真っ赤になる。彼の遠慮のないいやらしい言葉に、どうしてまだ驚くの?

「そうよ。あれから、あなたはずっと黙ったまま。服を着て、さっさと帰ってきた」

いまは正直なのがいちばんだと思ってつけ加える。「なんだか、自分が利用されているような気がする」

「はあ? 冗談だろ、利用なんかしていない。誰かを利用するなら、おれは絶対に何かを手に入れる」ぶっきらぼうな口ぶりに思わず涙が出てくる。必死に抑えようとしたのに、ほほにひと粒こぼれてしまった。

「泣いてるのか? おれ、変なこと言ったか?」ハーディンの手が腿に置かれると、不思議なくらい気持ちが落ち着いた。

「そんなつもりじゃ—ごめん。女といちゃついたあとに起こるあれこれに慣れてないし、寮の部屋にきみを送ってさっさと帰るつもりもない。いっしょに夕食でもどうかと思ってたんだ。腹が空いてるだろ?」彼は腿に置いた手に力をこめた。

ハーディンの言葉にほっとして、わたしは笑顔を返した。早合点した涙を拭くと、不安もいっしょに消えていった。

ハーディンの何がわたしをここまで感情的にさせるのかわからない。彼に利用されているのかと思うと、必要以上に動揺してしまう。彼に対する気持ちはぐちゃぐちゃ。大嫌いと思ったつぎの瞬間、キスしたくてたまらなくなる。

彼のせいで、思ってもみなかったことを心にも体にも感じる。もちろん、セックスとかそういうことだけじゃない。彼のせいでわたしは笑い、泣き、怒鳴り、叫ぶ。だけど、彼は何より、生きていることをわたしに実感させてくれる。

 

初めての絶頂、そして生きている実感。ひとまず区切りのふたりの物語ですが……実は、まだ続くのです!

『AFTER』公式サイトは、著者アナ・トッドのインタビュー、映画化・最新巻情報、各巻の読みどころなど、『AFTER』のすべてがわかる『AFTER』ファンのための特別サイトになっています。テッサとハーディンの未来はいかに……!? お見逃しのなきように!

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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