窃盗犯、「ストッキング」への並々ならぬ思いを語る。【法廷の変態シリーズ2】

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さてさて、ひさびさの法廷の変態シリーズ(第1回目はこちら→脱ぐ男)です。

このシリーズでは、裁判傍聴マニアである私が実際の法廷で出会った、日常生活の中ではなかなか知りえない変態クンたちをご紹介していきます。

 

今回は『窃盗事件』の裁判での出来事。実は傍聴マニアにとってこの『窃盗事件』というのはほとんどが万引きや常累窃盗といった、まぁこういったらなんですがよくある事件。

もう何度も裁判を傍聴してきた人にとっては、わざわざ見ようというものではないんです(傍聴初心者には短時間で一連の流れがわかるのでオススメなのですが)。

だけどこの日は珍しくほかに面白そうな事件がなかったため、仕方なく窃盗事件を傍聴することに。

 

被告人は29才無職のかなり細身のおとなしそうな男性で、検察官の冒頭陳述によると『下着泥棒』ならびに『万引き』の常習犯で、ストッキング収集マニアだった模様。

まぁこの手の裁判は何度も見てきましたし、裁判所も手馴れたもんで、サクサクと裁判が進行していきます。

 

そして裁判の終盤戦、弁護人が被告人に対し、「もうストッキングを集めるなんてバカなことはやめますね?」と問いかけます。

ここでは「はい」「もちろんです」などと再犯の可能性がないことを示すのが定石なのですが、なんと!

 

ここで今まで大人しくしていた被告人が突如声を大に、味方であるはずの弁護人に歯向かったのです。「ストッキングを愛することはバカなことなんでしょうか?」と。慌てる弁護人、ほくそ笑む検察官、……これは面白くなりそうだとニヤニヤする私。

 

「今日の裁判は、窃盗について裁かれているのではないのですか? ストッキングを愛する私の心までが罪なのでしょうか?」と、悔しそうに顔をゆがめる被告人。

 

すると、今まではつまらなそうにしていた裁判官(←私見です、はい)が急に身を乗り出し、被告人に尋ねます。「ストッキングはそんなにいいものなのですか?」と。裁判官のキラー質問で、退屈な法廷が一気に盛り上がるときに傍聴マニアとしてはいいようのない恍惚感を味わえるんですが、今回の裁判もまさにそう!

 

この質問を契機に、被告人の目がキラリン☆と輝き、一気にまくし立てたのです。

「ストッキングを小6で初めて履いた日から、私の人生は変わりました。それまで両親共働きでいつも家に一人で寂しい思いをしてきましたが、ストッキングを履いた途端、どこまでも下半身に吸い付いてきて一体化するような安心感が得られたんです。

逃げても逃げても追いついてきて、まるで生地に食べられるような感覚があることで、私だって愛されている、求められていると思うことができたんです。それ以来、ストッキングを履かないと気持ちが落ち着かなくなってしまいました。

 

それに、周りにはバレないようこっそりストッキングを履いている自分が、何か世の中に重大な隠し事をしていて、みんなには知りえないとんでもない秘密を抱えているような気がして、優越感を感じることができたんです。

……こんな私にも、勇気を与えてくれるものこそ、ストッキングだったんです。だから私は、こうして裁判にかけられても、一生ストッキングを履き続けます(キリッ)」

 

何か歴史に残る重大な告白を聞いているような錯覚さえして、不覚にも感動してしまった私。それは法廷にいるみながそうだったらしく、検察官までもがやさしい目で被告人を見つめているではありませんか!

 

そんなあたたかい空気を一身に浴び、被告人はさらに続けます。「もちろん罪は償います。これからは自分で稼いだお金でストッキングを買えるよう、就職して仕事を頑張ろうと思います」

おお! 30間近の無職男に勤労意欲を燃え上がらせたストッキング、すげー!!

そして裁判官は、実は私がいちばん知りたかったことを最後にしっかり聞いてくれたのです。

 

「ところで、あなたは今もストッキングを履いているのですか?」と。

 

すると被告人はズボンのすそを無言でまくっていくではありませんか。出てきたのは「おー!」と歓声を上げたくなるほどの美脚!

そして、その美脚には

もちろんストッキングが!

 

「これは100均で買ったものなので、締め付けが弱いんですよ。ちゃんとしたものを買えるようになるまでは、これでガマンですね、あはは」としっかりとした口調で語る被告人の、真摯な変態性になんだか感動を覚えつつ、法廷を後にした私なのでした。

 

ところで、たとえ変態だろうが、「何か熱いものを抱えて生きる男性はステキだ」と感じたのは、私だけでしょうか……?

 

■拙者著『恋愛saiban傍聴記』では、法廷で出会ったバカップルや変態さんをたくさん紹介していますので、よろしければご覧くださいね。→公式サイト

 

☆法廷の変態シリーズ

1. 『脱ぐ男に理解を示しすぎる裁判官』

2. 『真摯なストッキングフェチ男』

3. 『マナーに厳しすぎる傷害犯』

4. 『逮捕されてしまった宇宙人』

5. 『裁判で小遣いUPを宣言するカーチャン』

☆法廷の変態シリーズ番外編

『無職男、新幹線で全裸の謎』