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マナーに厳しすぎる傷害犯との遭遇!【法廷の変態シリーズ3】

2011/01/21 15:00  by   | 男性心理

裁判傍聴マニアである私が、実際に法廷で見た『変態』を勝手に追うシリーズの第3弾は、今までとはちょっと毛色が違うパターン。いわゆる『性的なエロ系変態』ではないことを最初に申し上げておきます。

 

とある『傷害』事件を傍聴したときのこと。

傍聴席に少し早めの開廷10分前に到着すると、すでに保釈中と思われる被告人が到着していました(保釈中だと被告人は腰縄、手錠をつけず自分の意思で出廷できます)。

さっそく被告人席に座る男を観察するに、被告人は40代半ばぐらい男で、見た目は眼光を鋭くしたサンドウィッチマン・伊達ちゃんの10年後といった雰囲気で、ガタイがよく、元体育会系だというのがひと目でわかる風貌の持ち主。

罪名が『傷害』と聞き、「お酒の席で大暴れ?」なんて予想をしたわけです。まぁそれだけ繁華街によく居がちな、ちょっとガラの悪さを漂わせていたわけですね。

 

そして時間ギリギリに、弁護人、検察官が到着、その後数分遅れて裁判官も入廷し、いざ開廷することに。

 

裁判ではまず最初に、まるで学校の授業の始まりかのように、事務官の号令で法廷にいる全員(傍聴人も)が裁判官に向かって、「起立、礼、着席」をするところから始まります。

 

…と、ここでいきなり法廷に不穏な空気が流れ始めたのです。

 

「起立、礼、着席」という裁判始めのこの恒例の儀式は、ある意味お約束程度のもので、毎回まぁこういってはなんですが、かなり『適当』なんですね。普通は。

なのにこの恒例の儀式の最中、あの伊達ちゃん(被告人をこう呼ばせていただきます)がいきなり大声をあげたのです。

 

「本日は、私のためにお集まりいただきましてありがとうございます!! よろしくお願いいたします!!」

 

えーーーーーーーっ!?

 

た、確かに私たちは伊達ちゃんのために集まってるわけで…。ってあれ? そうなんだっけ?

傍聴席がさっそく「ざわっざわっ」とし、裁判官も全力でキョトン顔。呆れた表情でため息をつく検察官に、あたふたする弁護人。でも伊達ちゃんはそんな空気をものともしない超タフガイでした。

 

そしていざ審議に。

検察官からの冒頭陳述によると、伊達ちゃんは都内の飲食店を経営していて、その出勤のために電車に乗った際、ほかの乗客とトラブルになり、殴る蹴るの暴行で全治6か月の重傷を負わせたんだとか。また伊達ちゃんは、過去にも複数回暴行事件を起こしており、いずれも民事の示談が成立し起訴猶予処分ですんでいたようで、今回がはじめての起訴、そして裁判のようです。つまりは暴行の常習犯だったようですね。人は見た目によるっていうんでしょうか。

 

そんなよくありがちな『電車内でのトラブル』が犯行のきっかけのようなのですが、その詳しいいきさつが被告人質問の中で語られました。

 

それによると…

通勤電車にゆられ、目的駅に着いた伊達ちゃんが電車から降りようとしたときのことです。

ドアが開き伊達ちゃんが降りようとするよりも早く、駅のホームにいた男(被害男性)が降りる乗客を待たずに乗り込んできたんだそう。

まぁこういったらなんですが、日常的によく見かける光景ですよね。

…が、伊達ちゃんは「よくあること」「しょうがない」ではすまさない男だったのです。

 

その男に伊達ちゃんは「降りる客を待ってから乗るのがルールだろう! みんなに謝れ!」と叱りつけたんだとか。

しかし男は伊達ちゃんを無視してそのまま車内へ。伊達ちゃんは追いかけ、男をホームに引き摺り降ろし「話し合おう」と提案するも、「うるせー」と一蹴されたことで怒りのスイッチが入り、そのまま暴行に及んでしまったんだとか。

 

また検察官からの反対尋問の際には、伊達ちゃんの過去の暴行事件についても語られました。

理由は「歩きタバコを注意したら」、「信号無視をしたのをとがめたら」、「レジでズル込みした人を指摘したら」など、いずれも今回のような「マナー違反に厳しすぎる」ことが動機だったのです。

 

そして今回の裁判の争点は『伊達ちゃんには再犯の可能性があるのかどうか』でした。

 

伊達ちゃんは尋問中、何度も繰り返しました。

 

「私はこれからも人として許せないことをした人間には注意していきます!!」と。

 

つまり動機が動機だけに、伊達ちゃんは『(殴ったことは悪いけど、でも)自分は正しいことをしている』という意識のままだったわけです。これは『再犯の可能性あり』と見られても仕方ありません。

なもんで、裁判はずっと平行線。

いくら弁護人に促されようと、その決意を曲げないもんだから、伊達ちゃんに不利のまま審議が進んでいきます。

たとえウソでも、「もう二度とそういう人を見かけても何もしません。反省してます」って言っちゃえば伊達ちゃんに有利な展開になるし、裁判も無事に終わるのにっ!

今回の伊達ちゃんのように、自分にいくら不利になろうとも、『譲れない頑固さ』をもつ被告人がたまにいます。(ちなみに私は『人の捨て身の信念』に触れるとゾクゾクッときてしまうタイプ)

 

そんないつになっても反省しようともしない伊達ちゃんに向かって、ついに裁判官がお説教を始めました。

 

裁判官「あのさー、そんなんじゃあなた、社会生活やっていけないよ。いちいちマナー違反の人に突っかかってるあなたのほうがおかしいこと、わかる?」

 

すると伊達ちゃん、みるみる怒りのボルテージが上がっていくではありませんか!

伊達ちゃん「あなたのそういう態度が日本をダメにしているんです! 私は信念を変えませんよ。ダメな人間にダメって言える世の中にしていくのが私の生き方なんです!」

心の中でひそかに、「そんなあなたこそダメな人間なのでは?」なんてイジワルな思いにあふれた瞬間、さらに伊達ちゃんが驚愕のひと言をっ!!

 

伊達ちゃん「裁判長、あなたは今日の裁判に6分遅刻しましたね。そしてそれを謝罪することもありませんでした。あなたの立場だと忠告してくれる人はいないんでしょうから私が言います。人との約束に遅れるものではありません。またそうなった場合は謝るべきです」

 

おおおおおおおおーーーーーーー! だ、伊達ちゃーーーーん!

 

裁判官がみるみる不機嫌になっていき、そして「終わります」と審議終了に。

うわー、これかなり伊達ちゃんにとって不利な展開になりました。裁判官の心象をここまで積極的に悪くする被告人に初めて遭遇しましたよ。

でも伊達ちゃんはというと、胸を張って堂々としており、何かを成し遂げたような満足げな表情を浮かべています。

 

そして裁判が終わり、私はひとりトボトボエレベーターに乗り、1階のボタンを押すと、なんとあの伊達ちゃんが同じエレベーターに乗りこんできたではありませんかっ!!

そう、伊達ちゃんは保釈中だったのです。裁判所では保釈中の被告人があちらこちらにいるので、遭遇することはよくあることなんですが、でも相手はあのマナーに厳しい伊達ちゃんです。

私は緊張で胸がドキドキ…。だって少しでもマナー違反な行動をするわけにはいかないんですからっ!

私は震える声で伊達ちゃんに勇気を出して話しかけました。

「何階行きですか?」と。

すると伊達ちゃんはハキハキした声で、

「ありがとうございます。大丈夫です。私も1階ですので」と返答。

 

よし、ここまでは失礼な行動はしていないはず。

 

そして1階につきました。

ここでもエレベーターマナーにのっとり、先に伊達ちゃんが降りるまで必死に『開』ボタンを押し続ける私。

すると伊達ちゃんも負けじと、自分よりも先に私を降ろそうとするのです。

どちらもマナーに敏感になりすぎて、ふたりともエレベーターから降りようとしないおかしな時間に。

 

と、伊達ちゃんがついに先にエレベーターを降りました。

ああこれでやっと降りられる、と私も外に出ると、なんと伊達ちゃんが

のポーズで私に向かって敬礼をしているではありませんか!!

うひゃー。もうどうしていいかわからず、思わず「ありがとうございました」とよくわからないお礼をして、小走りで駆け出した私。

 

そして『マナー』にがんじがらめになった男の精神構造の変態性に触れ、『人間ほどほどがいちばん』という至極まっとうな結論に達したのでした

 

でもあなたの周りにも、第2、第3の伊達ちゃんがいるかもしれません。最低限のマナーはきちんと守っておくが吉ですね。はい。

 

拙者著『恋愛saiban傍聴記』では、法廷で出会ったバカップルや変態さんをたくさん紹介していますので、よろしければご覧ください。

 

【参考】

※ 『恋愛saiban傍聴記』公式サイト

 

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