掲載
更新
弁護士が語る!夫から切り出す離婚の「慰謝料」相場4つ
星 花H.Hoshi
厚生労働省の調査によると、2012年の離婚件数は23万7,000組。日本ではほぼ2分に1組が離婚しているということになるようですが、愛し合って、一生添い遂げようと約束した相手なのに、「もう顔も見たくない」と、ある日突然離婚を告げられるのは悲しいことですね。
離婚経験者からは“結婚するより離婚するほうが何倍もエネルギーと使う”という意見をよく聞きますが、実際の修羅場では、どんなトラブルが起こっているのでしょうか? そして、どうしても気になってしまう“慰謝料”の金額はいくらぐらいなのか?
今回は、弁護士法人アディーレ法律事務所のパートナー弁護士、篠田恵里香さんに、男性が女性に離婚を切り出す主な理由と、慰謝料の平均額などを伺ってみました。
■1:浮気した/愛人ができた
「最近様子が変だなあと思っていたら、急に“離婚してほしい”と言われる大半がこのケース。理由を追及したら、“実は結婚したい相手が……”と夫が白状することも。
“許せない!”と逆上し、夫や不倫相手にくってかかる気持ちもわかりますが、離婚を避けたいのであれば、ここは広い心で“夫の出来心”として許してあげるのもありでしょう。そのうち浮気相手が、“奥さんといつ離婚するの!”と逆上し、夫と喧嘩別れするのを待つというのも、ひとつの手です。
浮気を理由とする離婚慰謝料の相場は100~300万円程度ですが、婚姻期間の長短や不倫の内容によっても金額は変わってきます」
なるほど。芸能ニュースやドラマなどを見ていても、最初は奥さんと離婚するつもりでも、時間がたつにつれ愛人への熱い気持ちも落ち着いてきて、同時に美しく優しかったはずの愛人の取り乱す姿に心が冷め、家族のもとへ帰るというパターンも多いですよね。もし修復したい意思があれば、慌てず冷静に行動したほうが良さそうです。
■2:性格の不一致
「性格の不一致といっても、中身は多種多様です。ともかくは、“人によって価値観は違う”ということを自覚すべきでしょう。特に男性はプライドや支配欲が強く、自分の意見が通らなくなると、“妻はわからず屋だ”“結婚当時は可愛かったのに”などと憎しみが積み重なり、最終的には“もう妻とはやっていけない”に発展するのです。
性格の不一致で離婚する場合は、原則として慰謝料は発生しませんが、夫が妻へ手切れ金として100万円程度のお金を払って離婚する場合もあります」
別の家庭で育った2人の人間が家族になるのですから、価値観や常識が微妙にズレていて当たり前ではありますが……。とはいえ、“自分の考え方が絶対”という我の強い態度が、溝を広げてしまいそうですね。
■3:親族との折り合いが悪い(嫁・姑・マザコン問題)
「特に長男の場合、妻に対し、“親との同居”や“親に対する敬意”を求める傾向にあります。妻が両親との同居に難色を示しただけで、侮辱行為だなどといって憤慨し、“もうお前とはやっていけない”と離婚に至るケースもあります。逆に、妻側の両親が、夫の性格や仕事などに干渉しすぎて嫌気がさしたというケースもあります。
“夫の両親となんて付き合いたくない”と毛嫌いせずに、むしろ“お姑さんと仲良くなろう”と前向きな姿勢でお付き合いするよう努力しましょう。嫁・姑問題の間に入れるのは夫しかいないので、夫に誠実な協力を求めることも大事です。
親族と折り合いが悪いことを理由に離婚する際は、どっちもどっちという側面があるため、慰謝料が認められたとしても50~100万円程度かと思います」
家族との距離のとり方も、結婚前に話し合っておきたい項目のひとつですね。完全同居が気を使うなら近居や二世帯など、お互いの落としどころ探りつつ穏やかに話し合って、離婚を回避したいものです。
相手をお姑さんと思うと難しく考えがちですが、もしも夫と自分が子供の頃に出会っていれば、彼女は“仲が良い友達のお母さん”です。そのくらいの気持ちで、敬意と親しみを持って接していきたいですね。
■4:性的不調和(セックスレス)
「性的不調和については、“妻の容姿が変化し、女として見られなくなった”という夫側の理由もありますが、“妻に性行為を求めても応じてくれない”という妻側の理由もあげられます。特に、奥様側が“触られるだけで鳥肌が立つ”なんて夫を毛嫌いするようなケースもあります。
お互いに、“自分を磨く・魅力的でいる”努力を怠らないとともに、“飽きないための性行為の工夫”なんて言うのも必要かもしれませんね。性交渉拒否を理由とする慰謝料の相場は、100万円前後ではないでしょうか。
夫婦関係を修復したいのであれば、素直に自分の非も認め、今後に生かしていくことが重要です。どうしても修復が不可能な場合は、“後悔しない離婚”をするために、慎重かつ冷静な判断をすることが大切です」
いかがでしたか? 離婚の実態を知れば知るほど、お金もかかり、精神的にも消耗しそうで、かなりのダメージを受けそうですね。
ひとつひつとは小さなすれ違いであっても、チリが積もるように鬱屈が溜まっていくと、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。
そうなる前に、“お互い別の人間なのだから、あわない面があって当たり前”と言う気持ちで、なるべく相手の立場に立つ視点も持ちつつ、まだ問題が小さいうちにその都度話し合いを重ねてゆきたいものですね。
【参考】
平成24年(2012)人口動態統計の年間推計 – 厚生労働省
『弁護士が教えるパーフェクト離婚ガイド』(アディーレ法律事務所)
【取材協力】
篠田恵里香・・・弁護士法人アディーレ法律事務所 パートナー弁護士(東京弁護士会所属)。男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。