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【連載29:AFTER】「ブラとパンティになれよ…」ついに覚悟を決めて思考停止した

2016/02/20 21:00  by   | 男性心理

「授業が終わったら、ふたりで何か楽しいことをする」そう約束していたテッサとハーディン。

テッサを車で迎えにきたハーディンは、うるさいロックをかけながら、人気のない場所へ向かいます。誰もいない静けさの中、テッサはハーディンのことよりも、抑えのきかない自分が何をしでかしてしまうか、それだけが不安なのでした(前回)。

 

■ブラとパンティになれよ

さらに二キロメートルほど走ったところで彼は車を止めた。窓の外を見ると、草地のなかに木立があるだけ。黄色い野の花が暖かな風に揺れる。静かですてきなところだけど、どうしてここへ連れてきたのだろうか。

「ここで何するの?」車から降りながら尋ねてみる。

「まず、すこし歩く」

わたしはため息をついた。運動のためってこと?

不満げな表情に気づいたのか、ハーディンはつけ加えた。「それほどの距離じゃない」そして、何度も通ってなぎ倒されたような草の上を歩いていく。

ふたりとも黙ったまま、目的地まで歩いた。遅すぎるとハーディンに何度か文句を言われたものの、無視してまわりを見渡す。あてもなく来たように思われたけど、彼がここを好きな理由がわかったような気がする。すごく穏やかで静か。本が一冊あれば、いつまでだっていられそうだ。

ハーディンは踏み分け道を外れて木立のほうへ入っていった。いつもの疑り深さが頭をもたげたが、わたしはあとをついていった。数分後、わたしたちは木立を抜けて小川のせせらぎに出た。いや、川といってもいい。どこのなんていう川かはわからないけれど、かなり深い流れのようだ。

ハーディンは何も言わずに、黒いTシャツを頭から脱いだ。タトゥーの入った上半身に目が吸い寄せられる。明るい日差しの下で見ると、肌に描かれた枯れ枝は不安をかき立てるというより、魅力的で興味をそそられた。

彼は屈かがみこんで、汚れた黒いブーツの紐を解いた。ちらっとこちらを見上げた拍子に、上半身裸でいるのを食い入るように見ているのがバレてしまった。

「ちょっと、どうして服を脱いでいるの?」わたしは小川に目を移した。「まさか、泳ぐの? あのなかで?」と流れを指さす。

「ああ、きみもだ。おれはいつも泳いでる」ハーディンはジーンズのボタンを外し、屈んで脚から引き抜く。わたしは、むき出しの背中の筋肉が動くのを必死で見ないようにした。

「やだ、あんなところでは泳がない」泳ぐのはかまわない。でも、ちゃんとしたプールでもない、こんな場所では不安だ。

「理由は?」彼は川のほうを身振りで示した。「底が見えるほどきれいなんだぜ」

「ってことは……魚もいるだろうけど、ほかに何があるかわからないじゃない」ばかげた台詞だとは百も承知だけど、無理。「泳ぐなんて聞いてないから、水着がない」

ハーディンも、それには反論できないはずだ。

「きみは、下着を着けない主義だって言ってるのか?」えくぼを見せてにやりと笑う顔にあきれてしまう。「そうじゃないなら、ブラとパンティになれよ」

待って。ここへ来たらわたしが服をぜんぶ脱いで、いっしょに泳ぐと思ってたの? ハーディンと裸で小川に入ることを思うと、お腹のあたりがかっと熱くなった。こんなこと、いままで一度だって考えたことないのに。

「下着姿で泳いだりなんかしない。いやらしいこと言わないで」わたしは柔らかな草地に腰を下ろした。「見てるだけにする」

ハーディンは不機嫌そうな顔になった。ボクサーパンツの黒い生地が体に貼りついている。上半身裸でいるのを見るのはこれが二度目だけど、広々とした空の下ではさらにすてきに見えた。

「つまらないやつだな。きみはいろいろ損してるよ」彼はそう言い捨てて川に飛びこんだ。

わたしは地面に目を落としたまま、むしった草をいじった。「水は温かいぞ、テス!」と川から呼ぶ声がする。濡れて黒くなった髪から水が滴り落ちるのが、ここからでも見える。彼は笑いながら髪をかきあげ、片手で顔を拭った。

 

■覚悟を決めたテッサ

一瞬、自分以外の誰かになりたいと思った。もっと度胸のある人間、そう、ステフのような。彼女なら服をぜんぶ脱ぎ、ハーディンといっしょに水温ぬるむ川に飛びこむだろう。しぶきを上げてはねまわり、岸に上がってはまた飛びこんで、彼とふたりでびしょ濡れになる。屈託がなくて、いっしょにいても楽しい人。

でも、わたしはステフじゃない。テッサだ。

「つまらないどころの話じゃないな……」ハーディンは叫ぶと、岸に泳いできた。わたしがむくれるのを見て、くすくす笑う。「せめて靴を脱いで、足を浸けてみろよ。すごく気持ちいいぜ。そのうち、入って泳ぐには水も冷たくなるだろうけど」

足を浸してみるだけなら、いいかも。靴を脱いでジーンズの裾をまくり、両足をちょっと川に突っこんでみる。ハーディンの言うとおり、水は温かく澄んでいた。爪先を動かすと、自然と笑みがこぼれた。

「気持ちいいだろう?」彼の言葉にわたしはうなずいた。「だから、思いきってなかへ入れよ」

首を横に振ると、水をかけられた。ぱっと立ちあがって、彼をにらみつける。

「川に入ってくれたら、きみの質問に答えてやる。いつものように、プライバシーにずかずか踏みこんできてもかまわない。なんでもいいよ。ただし、ひとつだけだ」

好奇心には勝てず、首を傾げて考える。彼は謎の多い人だけど、そのうちのひとつを解き明かすチャンスかもしれない。

「一分過ぎたら、申し出は無効だ」そう言ってハーディンは水のなかに消えた。しなやかな体が澄んだ水中を泳ぐのを見ていると、たしかに楽しそうだし、彼が言った交換条件も魅力的だった。好奇心をくすぐれば、わたしが言うとおりにすると知っているのだ。

「テッサ」水中から頭を出して、彼が言う。「考えすぎるのはやめて、思いきって飛びこめ」

「着替えがない。服を着たまま水に入ったら、びしょ濡れのまま戻ることになる」そのころにはもう、泳ぎたい気になっていた。というか、実はすこし前からそうだった。

「おれのTシャツを着ればいい」ハーディンの言葉にびくっとする。冗談かと思ったが、違うみたいだ。「遠慮するなよ。じゅうぶん長いから、ブラやパンティも脱がなくていい。まあ、脱いでくれてもかまわないんだけど」と笑顔で言うのを聞いて、わたしはあれこれ考えるのをやめた。

「わかった。でも、あっちを向いて。わたしが着替えるあいだ、こっちを見ないで—本気で言ってるんですからね!」おどすような声を出そうとしたけど、ハーディンは笑っただけだった。

彼がこちらに背を向けたので、シャツを頭から脱ぎ、急いで彼のをつかむ。かぶって着てみると、太腿のまんなかぐらいまで隠れた。思わず、Tシャツのにおいにうっとりする。コロンの残り香と、ハーディンの香りとしか言いようのないものが混ざり合ったにおいだ。

「早くしないと、そっちを向くぞ」棒切れでもあったら、頭に投げつけてやるのに。ジーンズのボタンを外して脱ぎ、シャツといっしょにちゃんと畳んで靴の隣に置く。ハーディンが振り向いたので、黒いTシャツの裾をできるだけ下げようと引っぱった。

彼は目を見開いて、わたしの体をまじまじと眺めた。口ピアスを嚙み、ほほを赤くしている。きっと、冷たい水で寒くなったせいだ。だって、わたしを見てそんな反応を見せるはずがない。

 

次回、ついに川に入ったテッサは、笑いと怒りと、悪ふざけの果てに、脚をハーディンの腰に巻き付けてしまう。驚いたハーディンのとった行動とは……!?

 

【参考】

アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)

 

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