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言葉だけじゃ離婚できない!? 「モラハラ&DV夫」と離婚する方法

相川葵

相川葵A.Aikawa

出会いの機会が減り、なかなか結婚できないと言われる昨今。

そんな中、ようやく良い相手に巡り会えたのに、モラハラなどの諸問題を抱えて離婚したい……そんな夫婦も増えています。

ところが、モラハラされたってことだけでは離婚できないという情報が! ええっ、本当なの?

今回は、恋愛心理カウンセラーの筆者が、弁護士の星野宏明さんに、別れたい夫と離婚する方法について、お伺いしてまいりました。

 

目次

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■旦那のモラハラで離婚したい!

モラハラというのは、昨今有名になってきた言葉で“モラルハラスメント”の略。

夫が家庭で、妻を無視する、口をきかない、妻のつくった食事をとらない、大きな音を立ててドアを閉めるなどして妻を威嚇し、恐怖心を植え付ける……などの行為が、モラハラにあたります。

通常、暴力を伴いませんが、どれも妻に対して大きな心理的な負担を与える行為。

それに、モラハラ夫は自己を正当化することに特化しているので、「オレを怒らせたおまえが悪い」という理屈で妻をじりじりと、精神的に追い詰めるものなんです。

先生、配偶者からモラハラを受けている場合は、離婚することができますよね?

「それが、モラハラされたというだけでは、法律的には性格の不一致ということになってしまいます」

え、そうなんですか!?

「モラハラの場合は、どんなひどいことをされたのか、事実を積みあげていった後、離婚に持ち込むためには、3年~5年くらいの別居期間が必要になります。一方、有責配偶者から離婚を申し出るためには、7年ほどの別居期間が必要です」

まずは、いつ、何をされたのか記録することが重要になりそうです!

それから、事実上の婚姻関係の破綻を、別居することによって、証明する必要があるということなんですね。

 

■DV夫と離婚したい!

モラハラではなく、DVの場合はどうでしょうか?

DV、つまり夫から暴力を受けているケースでは、別居しても追いかけてきて暴力を振るわれるとか、実家に逃げても怒鳴り込んでくるという話がたくさんあるのが現実です。

「DVの場合は、別居期間などを取る必要はありません。しかし、証拠集めはしなくてはなりません」

DVの証拠って、どのようなものを集めたら良いのでしょう。

「まず、診断書を取ります。それから警察を呼んで、被害届を出します。刑事事件として、暴行を受けたということで処理するのがいいでしょう。現場に呼ぶか、証拠を持って警察を訪れましょう」

暴行を受けてケガをしたときに、病院で出してもらえる診断書は、DV離婚の際に不可欠の証拠となるようです。

これに加えて、DVを受けた証拠となる写真も有効。

星野先生曰く、「証拠として提出する写真には、必ず日付を入れてください」とのこと。

写真に日付が入っていて、診断書もあれば、いつどのようなDVを受けたのかを、よりハッキリと証明することができますね。

悲しいかもしれませんが、DVを受けたときには、自分の傷跡をスマホなどで撮影することも怠ってはいけないようです。

DV被害者となる妻は、「自分が悪いから暴力を受ける」「病院へ行ったらまた怒られるかも」等の理由で、通院や証拠集めを尻込みする傾向にありますが、辛い思いをしているのですから、勇気を出して一歩踏み出していただきたいものですね。

 

■モラハラとDVの法律的な違いって?

星野先生は以下のように語ります。

「DV(実際に暴力を受ける場合)は、証拠が集めやすいけれども、言葉のDV、つまりモラハラは、立証が難しいんです」

DVは、殴る蹴るなどされれば実際に暴力の痕跡が残りますので、病院に行って治療してもらい、診断書を受け取れば、これをDVの動かぬ証拠として残すことができます。

しかしモラハラの場合はそうではなく、ただ言葉で暴言を浴びせられるだけでは、なかなか証拠を残すことはできません。

この暴言を録音した場合でも、法律的にNGなことをしているというわけではなく、「主観的に、これらの発言によって、妻が嫌な思いをした」という見方しかできないため、結果的に性格の不一致とみなされ、離婚するためには長期間の別居の事実が必要になってしまうのです。

モラハラの場合は、必ずしも罵声を浴びせるだけではなく、“サイレントモラハラ”と称される、言葉では何も責め立てたりしないのに、無視したり、視線や身振りで妻を威嚇するタイプのモラハラも存在しています。

このようなモラハラの場合は、さらに証拠集めが難しくなるでしょう。

しかし、モラハラの場合でも、精神的に追い詰められて、病院の精神科などで、精神疾患の診断書が出るようであれば、DVの場合と同じく、これを証拠として持ち出すことができます。

また、モラハラをされることが一度や二度ではなく、毎日、あるいは度々繰り返されたことがちゃんと記録できていれば、これが診断書とあわせて証拠として採用されることもあるのだそうです。

 

■別居時の通帳をコピーせよ!

離婚を決意したら、「とにかく別居して時を稼ぐ! そして、別居自体を離婚原因とすると、裁判所で認められる」と星野先生も仰っていますが、このときに、絶対やっておいたほうがいいことが一つ。

それは、“別居するとき、通帳のコピーを持って出ていく”ということ!

「離婚時の財産分与は、別居時の財産をもとに計算されます。

別居していても、婚姻中は、妻が夫から婚姻費用を受け取ることができます。さらに離婚時には、別居をはじめた時の財産をもとに、財産分与額が計算されるので、銀行名と支店名、口座番号、それから残高がわかるように、メモやコピーをとってから別居しましょう」

あとで財産分与のときに、別居当時の残高を調べるのって、大変なんだそうです。

なので、銀行口座の残高だけではなく、不動産価格なども調べておくと優秀! もっとも、銀行の残高と違って、不動産の価格は後でも調べやすいとのこと。

万が一、別居中に夫が財産を目減りさせてしまっても、別居前の残高を基準に財産分与してくれるとなれば、ひと安心かもしれませんね。

 

DVやモラハラのひとつの特徴として、“機嫌のいいときの夫は、たいてい良い人”ということが挙げられます。

つまり、爆発する前は、妻に対してニコニコしたり家族サービスをしたり、DVの場合には、暴力をふるったことについて平謝りして「絶対にもうしないから!」と繰り返し約束することも多いのです。

ですから、場合によっては、別居中に平謝りされ、ほだされて復縁してしまうケースも……。

ところが、ここで男の元に戻っても、別居を試みたことをネタにさらにDVが酷くなるという現実もあるんです。

DV更生の心理カウンセリングや、更生プログラムで、改善する人もいますが、ごく一部。

自分の環境をよく見極めて……もし離婚すると決意したなら、この記事を参考になさってくださいね。

 

【取材協力】

※ 星野宏明・・・弁護士。北京大学、早稲田大学法学部に所属後、慶應義塾大学大学院法務研究科を修了。実務を経て、西新橋に『星野法律事務所』を設立。家庭問題、消費者問題、介護問題その他、もろもろの生活トラブルの強い味方として活躍中。専門分野は外国人事件、離婚・不貞による慰謝料問題等。

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