【連載7:AFTERⅡ】うまくいくはずなかった…うそから始まった2人

ハーディンの告白に心が揺れるテッサ。それでも彼の裏切りを許すことはできない……彼は今もうそをついているかもしれないのに、彼を信じたい、愛しているという気持ちは止められるものではなかった。このまま彼の腕に抱かれたい気持ちを振り切り、テッサはふたたび彼を突き放す! 『AFTER seasonⅡ 壊れる絆』連載第7回。
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うまくいくはずなかった……でも「愛してるわ」

「いまの話を信じたとしても、あなたを許すことはできない」わたしがまばたきで涙を抑えると、ハーディンは両手で頭を抱えた。

「おれを愛していないのか?」と指の隙間からこちらを見る。

「愛してるわ」真実の告白がふたりのあいだに重く垂れこめる。両手を下ろしてこちらを見つめるハーディンの仕草に、わたしはいまの言葉を後悔した。でも、ほんとうのことだ。わたしは彼を愛している。愛しすぎるほどに愛してる。

「じゃあ、どうしておれを許せないんだ?」

「許せるようなことじゃないからよ。あなたはうそをついただけじゃなく、賭けに勝つためにわたしのバージンを奪った─さらに、血のついたシーツをみんなに見せた。そんなのを許せる人間がいると思う?」

ハーディンは両手をぱたりと落とした。濡れた緑色の瞳に絶望が映る。「バージンを奪ったのは、きみを愛してるからだ!」でも、わたしが激しく首を横に振ったので、彼はさらに続けた。「きみなしでは、自分がどんな人間かももうわからない」

わたしは目をそらした。「うまくいくはずなかったのよ。ふたりともわかってるはずだわ」自分の気持ちを楽にするために、ハーディンに言葉を投げつける。こうして向かいに座り、彼が苦しむのを見ているのはつらい。でも、正直言えば、彼が苦悩するのを見て、わたしの心の痛みはすこし……薄れていった。

「どうして、うまくいきっこないんだ?おれたち、あんなに─」

「すべて、うそから始まったことだからよ、ハーディン」彼がもがき苦しむ姿を見てふいに強気になったのか、わたしは続けた。

「それに、自分の格好を見てよ。わたしと釣り合うと思う?」

ふたりの関係について彼がいちばん不安に思っていることを当てつけてやったのは─わたしのなかでも何かが死んだけど─ハーディンの表情を見れば、当然の報いだと思えた。

彼はいつも、わたしといっしょにいる自分がどう見えるか、自分がわたしにはふさわしくないのではないかと心配していた。それを、あえて持ち出してやったのだ。

「ノアが関わってるのか? やつに会ったんだろう?」ハーディンの図々しい言葉に、わたしは顔をそらした。彼の瞳が涙に濡れているけど、自分に言い聞かせる。これはぜんぶハーディンのせいだ。彼がすべて、ぶち壊したんだから。

「ええ、会ったわよ。でも、そんなの関係ない。ぜんぶ、あなたの問題よ。自分の振る舞いの結果なんて気にせず、やりたいようにやって周りに迷惑かけてるのに、許してもらおうなんて虫がよすぎるわ!」わたしはテーブルを離れた。

「違う、そんなんじゃない!」わたしがあきれた顔をすると、ハーディンは口ごもり、立ち上がって窓の外に目をやってから、こちらを向いた。「いや、そうだな、やっぱりそうかもしれない。でも、きみのことはほんとうに大事に思ってる」

「それは、わたしをモノにしたと自慢してるときに思い出すべきだったわね」

 

こんなの間違ってる……なのに……

「きみをモノにした? 本気でそんなふうに思ってるのか? そんな言葉じゃ言い表せない─きみはおれにとってすべてだ! おれの命、心の痛み、愛情、おれの人生すべてなんだよ!」ハーディンは一歩踏み出してきた。いままで彼が言ってくれたなかでいちばん心に響く言葉なのに、怒鳴るように言われるなんて。

「ふん、遅すぎたみたいね! そんなふうに言いくるめて─」

ハーディンはいきなり手をうなじに添えてわたしを引き寄せると、唇をわたしの唇に押し当ててきた。温かな唇の感触に、ひざから崩れ落ちそうになる。

何が起こっているのか理解する前に、わたしは舌で彼の舌をなぞっていた。安堵するように声をもらすハーディンの体を押しのけようとする。でも、彼は片手でわたしの両手首をつかんで胸に抱き寄せ、キスを続けた。

わたしは逃れようともがきながらも、唇を離せなかった。ハーディンはわたしを引き寄せたまま後ずさり、カウンターにぶつかると、もういっぽうの手を首に添えてわたしをじっとさせた。

胸のうちにあった痛みがゆっくり鎮まっていき、わたしはつかまれている両手から力を抜いた。こんなの間違ってる、でも、これ以上ないほどしっくりくる。

でも、やっぱり間違ってる。

わたしは体を引いた。ハーディンはふたたび唇を重ねようとしたが、わたしは顔を背けた。「やめて」

彼のまなざしがすこし和らぐ。「お願いだ……」

「だめよ。もう行かなくちゃ」

ハーディンはわたしの手首を放した。「行く、ってどこへ?」

「ま……まだわからないけど。母が、また寮に入れてもらえるようかけあってる」

「だめだ……だめだよ」首を振るハーディンが、どんどん取り乱していく。「きみはここで暮らすんだ、寮には戻るな」と両手で髪をかきむしる。「出ていくべき人間がいるなら、それはおれだ。頼むから、ここにいてくれ。そうすれば、きみの居場所を心配せずにすむ」

「わたしの居場所なんて、あなたが知る必要ないわ」

「ここにいてくれ」

ほんとうに自分に正直になるなら、ハーディンといっしょにいたい。息もできないぐらいに彼を愛してると言いたいけど、やっぱりできない。自分の意志もなく、いいように男にあしらわれるのは、もうごめんだ。

わたしはバッグを拾い上げ、ハーディンが絶対についてこないような言葉を投げつけた。「ノアと母が待ってるから、もう行くわ」うそをついて玄関を出る。

ハーディンは追ってこなかった。彼が苦しむさまを見ないよう、わたしは振り向かずにいた。

 

次回、アパートを出たテッサはついに行き場所をなくしてしまう。仕方なく彼女が向かったのは……!?

 

 

【参考】

アナ・トッド(2016)『AFTER season2 壊れる絆 1』(小学館文庫)

 

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