【連載21:AFTERⅡ】あいつとヤったのか!? 問い詰める彼に…

初めてのナイトクラブではしゃぎすぎ、別れたはずの恋人ハーディンに電話をし、見知らぬ男とキスをしてしまったテッサ。すっかり酔ってホテルに帰ると、「スマホを取り違えていないか」と同僚のトレヴァーが部屋に訪れた。そこへさっき電話をしてしまったハーディンが現れ、なんとテッサの部屋で鉢合わせに……!? 連載第21回。
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トレヴァーがいるのに……彼が部屋に!?

「バスルームに隠れて」

トレヴァーは目を丸くした。「えっ? そんなところには隠れられないよ!」

たしかに、我ながらばかげた考えだ。

「早く開けろって言ってるんだ!」ハーディンはまたしても大声をあげると、ドアを蹴り始めた。しかも、何度も。

ドアを開ける前にもう一度トレヴァーを振り返った。ハーディンに台無しにされる前に、ハンサムな顔を覚えておきたかったからだ。

「いま行くってば!」怒鳴り返しながらドアを半分開けると、激怒するハーディンがいた。全身黒ずくめだ。酔いのさめない目で見ると、足元はいつもの分厚いブーツではなく、黒のシンプルなコンバース。ブーツ以外のものを履いているのは、いままで見たことがなかった。黒のスニーカー、すごくいい……。

つい、注意をそらされてしまった。

ハーディンはドアを押し開けると、まっすぐトレヴァーのところへ行く。幸い、シャツをつかんでなんとか彼を止められた。

「彼女を酔わせたら、ホテルの部屋でヤれると思ったのかよ!」

ハーディンは叫びながら、なおもトレヴァーに向かおうとする。彼が本気を出したら、薄いシャツをつかむわたしなんて振りほどいているはずだ。

「明かりが点くのがのぞき穴から見えた─暗闇のなか、ふたりきりで何してたんだ!」

「ぼくは何も……ただ─」トレヴァーが言いかける。

「ハーディン、いいかげんにして! そんなふうに始終、人にいちゃもんつけるなんてできないわよ!」わたしは彼のシャツを引っ張った。

「いいや……できるね!」

「トレヴァー。自分の部屋に戻って。わたしがハーディンに言い聞かせるから。いかにもクレイジーな振る舞いは許してやって」

“クレイジー”という言い方がおかしかったのか、トレヴァーは声をあげて笑いそうになったけど、ハーディンにじろっと見られただけで黙りこくった。

彼が出ていくと、ハーディンはこちらを見た。「クレイジーな振る舞いだと?」

「そうよ、おかしいわ! いきなりやってきて部屋に押し入り、わたしの友達を叩きのめそうとするなんて」

「だいたい、やつがここにいるのがおかしいんだ。なんでだよ? なんで、きみはまだ服を着てるんだ? それに、あのワンピースはなんなんだ?」ハーディンはわたしの体をちらっと見た。

わたしはおなかのあたりが熱くなるのを無視しつつ、怒りの気持ちに集中した。

「スマホを取り違えてしまったから、トレヴァーが返しに来てくれたのよ。それに……いま言われた質問、忘れちゃった」

「ふん、きみが酒を飲みすぎたのがいけないんだ」

「いつ、どこで、何を、どんなふうに飲もうとわたしの勝手よ。おあいにくさま」

ハーディンはあきれたような顔をした。「酔っ払ってるときのきみは、ひどく頭にくるな」と背もたれの大きな椅子にどさりと座りこむ。

「あなたは……何してるときだって、頭にくるわ。それに、座っていいなんて誰も言ってないでしょ?」わたしは腕組みをしながら怒った。

ハーディンはすてきな緑色の瞳でこちらを見上げる。どうしよう、いまの彼ってすごくすてきに見える。

 

「ヤったのか?」

「きみの部屋にやつがいたなんて、信じられないね」

「あなたがわたしの部屋にいることだって信じられない」

「やつとヤったのか?」

「はああ? よくもそんな質問をできるわね!」

「答えろよ」

「冗談じゃないわよ、このろくでなし。もちろん、してないわ」

「ヤるつもりは……きみはヤりたかったのか?」

「いいかげんにしてよ、ハーディン! あなた、おかしいわよ!」わたしは首を横に振りつつ、窓とベッドのあいだを行ったり来たりした。

「そうか、じゃあなんで、きみはまだ服を着たままなんだ?」

「その質問、ぜんぜん意味がわからない!」わたしはあきれて、顔を背けた。

「それに、わたしが誰とセックスしようと、あなたには関係ない。トレヴァーとベッドをともにしたかもしれないし─ほかの誰かと寝たかもしれないわよ?」

うっすら笑いそうになったけど、真顔のまま、ゆっくりと言う。「あなたには知る由もないわ」

思いどおりの効果があったのか、ハーディンはむっつりと獣のような表情をして怒鳴る。「いま、なんて言った?」

ワオ、思った以上におもしろくなってきた。酔っ払った状態でハーディンにまとわりつくのって大好き。何も考えずに言いたいことを言えるし、何もかも楽しくなってくる。

「聞こえたでしょ……」ハーディンに近づいていき、のしかかるように言う。「クラブで知り合った男にバスルームに連れていかれたかもしれないわよ。トレヴァーがわたしをこのベッドに連れてきたかもしれないし」さりげなく、肩越しにベッドへちらっと目をやる。

「黙れ。もう何も言うな、テッサ」

だけど、わたしは声をあげて笑ってやった。力が与えられたような、自分が強くなったような気がして、ハーディンのシャツを剥ぎ取ってやりたくなる。

「何がいけないの? トレヴァーの両手がわたしの全身を這い回るのがいやなの?」

ハーディンが激怒しているからか、アルコールのせいか、それとも彼を恋しく思っているからなのか、自分のしていることを考えすぎる前に、椅子に座ったままのハーディンの膝にまたがっていた。

彼の太ももを挟むように膝でがっちり固めるわたしにすっかり驚いたのか、彼は震えていた。たぶん、見間違いじゃないと思う。

「な、何を……何をしてるんだ、テッサ?」

 

次回、酔ったテッサに迫られ、たじろぐハーディン。テッサはそんなことおかまいなしにハーディンを求める……!

 

 

【参考】

アナ・トッド(2016)『AFTER season2 壊れる絆 1』(小学館文庫)

 

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