【連載25:AFTERⅡ】ああっなんてこと!酔った勢いで彼と…

恋人ハーディンの裏切りが許せず、2人のアパートを飛び出したテッサ。しかし心は彼から離れることができず、アルコールの勢いに任せてハーディンの番号をコールする。出張先のホテルの部屋に訪れた彼と熱い一夜を共にして、目覚めてみると……?『AFTER seasonⅡ 壊れる絆』連載第25回。
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何これどういうこと……? すっかりパニック!

スマホのアラーム音が眠りを破る。踊りまくるペンギンみたい。比喩ではなくほんとうに、夢うつつの頭のなかでペンギンが踊っていた。

だけど、愉快な妄想は長くは続かなかった。すこし起き上がった瞬間、頭が割れそうに痛くなる。体を起こそうとしても、何か重いものがのしかかっている。何か、じゃない。誰か、だ。

やだ。キモい男性と踊ったのを急に思い出し、動揺とともにぱっと目を開けると……見慣れたハーディンのタトゥーが広がっていた。彼はわたしのお腹に頭をのせ、片方の腕をわたしの体に巻きつけている。

うそ、何これ? どういうこと?

ハーディンを起こさずに押しのけようとしたけど、彼はうめき声とともにゆっくり目を開けた。開けた目をまた閉じ、もつれた脚を解きながらわたしの上から下りる。

わたしは飛び上がるようにしてベッドから下りた。彼はまた目を開けたものの、何も言わぬまま、肉食動物でも見るようにこちらをにらむ。ハーディンに激しく腰を打ちつけられながら、彼の名前を叫ぶ自分の姿が頭に浮かぶ。うそ、わたし、いったい何を考えていたの?

何か言いたかったけど、正直言って頭が真っ白。すっかりパニック状態で、脳が溶けてなくなりそう。

わたしが葛藤しているのがわかったのか、ハーディンはシーツを体に巻きながらベッドから下りた。ああ、どうしよう。彼は椅子に座って、こちらを見ている。気づいてみると、わたしはブラしか着けていない。とっさに脚を閉じて、ベッドにまた腰を下ろす。

「何か言えよ」

「あの……なんて言ったらいいかわからない」こんなことになったなんて、自分でも信じられない。ハーディンがここに、わたしのベッドに裸でいるなんて。

 

「君が電話してきた」わかってるけど聞きたくない!

「ごめんな」彼はうなだれて、頭を抱えた。

ほんの数時間前に浴びるほど飲んだアルコール、それにハーディンとゆうべ寝てしまったという事実に頭が割れそうになる。

「そう思って当然よね」

ハーディンは自分の髪をぐっとつかんだ。

「きみが電話してきたんだ」

「ここに来てとは言ってない」

厳しい声で言い返したものの、どう対処していいのか決めていなかった。ハーディンとけんかしたいのか、追い出したいのか、それとも、大人として穏便に収めるのか。

立ち上がってバスルームに行くわたしをハーディンの声が追いかけてくる。「きみが酔っ払ってたから、トラブルに巻きこまれたのかと思ったんだ。そしたら、トレヴァーがここにいた」

わたしはシャワーの栓をひねり、鏡を見た。首筋に真紅のあざ。しまった。キスマークに指をやりながら、肌を這うハーディンの舌を思い出した。

まともに頭が働かないなんて、お酒がまだ残っているにちがいない。過去と決別して前に進んでるつもりだったのに、わたしの胸を張り避けさせた張本人がここにいる。乱れたティーンエージャーみたいに、ばかでかいキスマークまで首につけられて。

「テッサ?」

シャワーのなかにわたしが入った瞬間、ハーディンがバスルームにやってきた。わたしは無言で、熱いお湯に罪を洗い流されるがままになっていた。「きみは─」彼の声がかすれて聞こえる。「ゆうべのこと、気にしてないのか?」

なぜ、そんなことを言うの? 目を開けた瞬間に、彼は気取ったふうに笑いながら“どういたしまして、大歓迎だ”って五回は言うと思ったのに。

「あの……わからない。いいえ、気にしてないわけじゃないわ」

「おれのこと……嫌いになったか? 前よりももっと?」

傷ついているような心もとない声に胸が痛む。でも、ここで折れたらだめよ。この状況はぐちゃぐちゃでどうしようもないけど、やっとハーディンを忘れられそうだったんだから。うそ、そんなことない。心の片隅で嘲る声がしたけど、わたしはそれを無視した。

「いいえ、前と同じくらい嫌いだわ」

「そうか」

わたしはもう一度、髪をすすいだ。シャワーを浴びたことで二日酔いがさめますように。そう祈りながらお湯を止める。

「酔っているきみにつけこむつもりはなかったんだ、誓ってもいい」

ラックからタオルを取り、体に巻きつける。ハーディンはボクサーパンツだけで戸口に寄りかかっている。彼の胸や首筋にもいっぱいキスマークがついていた。

もう二度とお酒なんか飲まない。

「テッサ、頭に血が上ってる状態だろうけど、おれたち、話し合わなくちゃだめだ」

「いいえ、そんな必要ない。わたしは酔っ払って電話した。あなたがここへ来て、セックスした。どこに話し合うことなんてあるの?」

できるだけ冷静でいようとした。ハーディンにはわたしをこんなふうにしてしまう力がある。ゆうべだってそうだ。でも、そんなこと知られたくない。

ふと、彼の手の甲が赤く擦りむけているのが見えた。「その手、どうしたの? うそ、ハーディン─トレヴァーを殴ったのね!」大きな声をあげた拍子に、突き抜けるような痛みが脳天に走る。

「はあ? そんなことしてない」ハーディンは弁解するように両手をあげた。

「じゃあ、誰を?」

彼は首を横に振った。「誰だっていい。なあ、もっと話し合うべきことがある」

「ないわよ。何も変わってないのに」メイク道具の入ったバッグを開けてコンシーラーを首筋にたっぷり塗っていると、ハーディンは音もなく後ろに立った。

「あれは間違いだった、そもそも、あなたに電話しちゃいけなかったのよ」

三度重ね塗りをしても、キスマークが隠れないのにいらいらする。

「間違いなんかじゃなかった。きみは明らかに、おれを恋しがってた。だから電話してきたんだろ」

 

次回、自分の行動に戸惑うテッサは、その苛立ちを言葉でハーディンにぶつけてしまう。ハーディンはなだめようとするが、売り言葉に買い言葉で……!?

 

 

【参考】

アナ・トッド(2016)『AFTER season2 壊れる絆 1』(小学館文庫)

 

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