【連載28:AFTERⅡ】ひどい二日酔い!でも頭痛の種は彼…

テッサは、恋人ハーディンが自分の処女を仲間たちとの賭けに使っていたと知って、2人で暮らすアパートを飛び出す。心の傷が癒えぬまま仕事に打ち込んでいたが、出張先のホテルの部屋に訪れたハーディンと、酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。『AFTER seasonⅡ 壊れる絆』連載第28回。
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そんな! 彼はそんなこと……絶対にしない

「で……ハーディンはまだいるの?」

「ううん。もう、二度と戻ってこない」どうでもいいような声をつくる。「よく眠れた?」話題を変えようと、質問してみる。

「ああ、でも、きみのことが心配で」トレヴァーがわたしの首筋に目を走らせる。キスマークが見えているかもしれない部分を隠そうと、わたしは髪をいじった。

「心配? どうして?」

「ひとつきいてもいいかな? 気を悪くしたら申し訳ないんだけど……」

慎重に探るような口調にちょっと緊張する。「うん……何?」

「ハーディンはこれまでに……あの……きみを傷つけたりはしてないよね?」トレヴァーは床を見つめた。

「えっ? けんかはよくするから、彼にはいつも傷つけられてるわ」わたしは香りのいいコーヒーをもうひと口、急いで飲んだ。

トレヴァーはきまり悪そうな顔でこちらを見た。「物理的に、という意味だけど」

わたしはぱっと彼を振り向いた。ハーディンがわたしに暴力を振るってるんじゃないかって? そんなふうに思われているなんてぞっとする。

「まさか! そんなことあるはずないわ。ハーディンはそんなこと、ぜったいにしない」

トレヴァーにはわたしを怒らせるつもりなどないのは、彼の目を見れば明らかだった。

「ごめん……ただ、ハーディンはすごく乱暴で怒ってるように見えたから」

「彼はいつも不機嫌で、暴力的になることもあるけど、わたしを物理的に傷つけるようなことはぜったいにしない」

そんなふうにハーディンを責めるトレヴァーに対して、なぜか怒りがわいてくる。彼はハーディンを知らないから……でも、考えてみれば、わたしだって知らないも同然だ。

無言でトレヴァーと立ったまましばらく考えていると、キンバリーがブロンドの髪をはずませながらやってきた。

「ほんと、ごめん。ぼくはただ、きみはもっとちゃんとした扱いを受けてしかるべきだと思ったから」トレヴァーはキンバリーとクリスチャンが来る前に小声で言った。

 

最悪の気分……でもうれしいお誘い

「もう、最悪の気分。こんなひどい二日酔いはひさしぶり」とキンバリーがうめく。

「同じよ─頭が割れそう」わたしは彼女に調子を合わせながら、長い廊下を歩いてカンファレンスセンターへ向かった。

「でも、元気そうに見えるわよ? わたしはといえば、たったいまベッドから這い出したような感じ」とキンバリーが言う。

「そんなことないよ」クリスチャンは彼女のおでこにキスをした。

「ありがと。でも、あなたの見方はかなり偏ってるから」キンバリーは明るく笑い、両方のこめかみをさすった。

「今夜のお出かけはなしだね」とトレヴァーがにっこりすると、みんなうなずいた。

カンファレンスセンターに着くと、わたしはまっすぐ朝食用カウンターへ行ってグラノーラをボウルに入れた。いつもより急いで食べながらも、ハーディンの言葉を頭から振り払えずにいた。せめて、もう一度彼にキスしておけば……違う、何言ってるのよ! もう、まだお酒が残っているにちがいない。

セミナーはどれもあっという間に過ぎていった。基調講演の人の声が大きすぎるとキンバリーはうめいたけど、昼食の時間になると、わたしの頭痛はほぼ消えていた。

お昼だ。ハーディンはキャンパスに戻ったころだろう。きっと、モリーといっしょにいる。わたしへの当てつけのためだけに、まっすぐ彼女のところへ行ったにきまってる。

わたしたちのアパートメントで、ふたりはもうセックスしたのだろうか? 違う、わたしたちが住んでいたアパートメントで。わたしとハーディンのための、あのベッドで?

ゆうべ、わたしに触れて彼が悦びの声をあげていたのを思い出すうち、いつの間にか、わたしの体がモリーと入れ替わっていた。ハーディンに絡みつくモリー。モリーの体を撫で回すハーディン。

「ねえ、聞いてた?」トレヴァーが隣に座る。

わたしは気まずさにほほ笑んだ。「ごめんなさい、ぼうっとしてた」

「みんなで出かけるのは取りやめになったから、軽く外で食事でもどうかと思って」そう言うトレヴァーのきらきら光る青い瞳を、わたしはじっと見つめた。すぐには返事をせずにいると、彼は口ごもった。「もし……いやなら、それはそれでいいけど」

「ううん、実はすごくうれしい」

「ほんとに?」トレヴァーがほっと息をついた。きっと、断られると思っていたのだろう。ハーディンにあんな態度を取られたのだから、そう考えても当然だ。

頭がどうかしてるわたしの元カレに脅されても、トレヴァーはデートに誘ってくれた。その思いに胸を熱くしながら、わたしは午後のセミナー四時間を乗り切った。

 

次回、トレヴァーとのディナー前に、母に電話するテッサ。電話の向こうの母は「彼との関係は終わらせなさい」と……!

 

 

【参考】

アナ・トッド(2016)『AFTER season2 壊れる絆 1』(小学館文庫)

 

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