【連載33:AFTERⅡ】頼れる友達!クリスマスの予定は…

アパートを飛び出し、モーテル暮らしを始めたテッサ。一人で過ごす日々は意外と快適だけれど、誕生日、そしてクリスマスが近付いてきていた。本当なら今頃、ロンドンで彼と過ごしていたはずだったのに……。一人誕生日を過ごすモーテルに、親友ランドンが訪れる。そして親友はなんとテッサに驚きの情報をもたらしてくれた!? 連載第33回。
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「誕生日おめでとう」友達の祝福

一時間後、ドアをノックする音がした。開けてみると、いつもの温かな笑顔があったので、つられてほほえむと、ランドンにハグされた。

「誕生日おめでとう、テッサ」と頭のてっぺんにささやかれる。

「ありがとう」わたしも彼をぎゅっとハグし返した。

ランドンはようやく離れると、デスクの椅子に腰を下ろした。「歳をとった感じがする?」

「いいえ……ううん、そうね。先週一週間で、十歳は老けたような気がする」

彼はちょっと笑ったものの、何も言わなかった。

「デリバリーを頼んだの─よかったら、たくさん残ってるけど」

ランドンは後ろを向き、デリバリーの容器とプラスチックのフォークを机から取り上げた。「ありがと。一日じゅう、ここでだらだらしてたの?」

「そのとおりよ」わたしは声をあげて笑いながら、ベッドであぐらをかいた。

残り物を食べながらランドンはわたしの後ろに目をやり、片眉をつり上げた。「電子書籍リーダーを買ったの? ああいうのは大嫌いだって言ってたのに」

「えっと……それはそうなんだけど、いまはちょっと気に入ってるの」わたしはリーダーを手に取り、褒め言葉を並べた。「何千冊もの本が指先一つで取り出せるのよ! これ以上のものってあるかしら」と、小首を傾げてにっこりしてみせる。

「自分あてに誕生日のプレゼント買うのって、サイコーだよね」と、ランドンは口いっぱいにライスをほおばりながら、棒読み気味に言う。

「実は、ハーディンが買ってくれたの。わたしの車のなかに置いてあったのよ」

「へえ。彼にもいいとこあるね」ランドンの口調はどこか妙だった。

「うん、とっても。しかも、すばらしい小説をたくさんすでにダウンロードしておいてくれたの……」

「で、きみはどう思ってるの?」

「いままで以上に混乱してる。ハーディンは、こんなふうにとんでもなく親切なことをするかと思えば、ひどくわたしの感情を傷つけるようなこともする」

ランドンはにっこりしてフォークを振った。「ふむ、彼はきみを愛してるんだよ。残念ながら、愛というのは常識とは相容れないことが多い」

わたしはため息をついた。「彼は、愛するってことがどういうことかわかってない」恋愛小説のリストをスクロールしてみると、常識外れの行動をしでかす人物が出てくるものばかりだった。

「昨日、彼はぼくのところに話をしに来たんだよ」とランドンが言うので、わたしは電子書籍リーダーをベッドの上に落としてしまった。

「なんですって?」

「うん、そう言いたくなるよね。ぼくも驚いた。ぼく、もしくはケン、ぼくの母でもいいから話がしたかったみたいなんだ」

わたしは信じられずに首を横に振った。「どうして?」

「助けを求めるためさ」

なんだか不安になる。「助け? なんの助け? 彼、だいじょうぶなの?」

「ああ……、いや、だいじょうぶじゃない。ハーディンは、きみのことで助けがほしかったんだ。すっかり精神的にまいってる感じだった。っていうか、よりによって、嫌っている父親の家にまでやってきたんだよ?」

「彼、なんて言ってたの?」

ハーディンが人間関係のアドバイスを求めてケンの屋敷に来るなんて、想像もつかない。

「きみを愛してるってこと。それに、彼にもう一度やり直すチャンスを与えるよう、ぼくにきみを説得してほしい、って。きみには秘密にしておけないから、正直に言っておく」

「それって……なんて言ったらいいか、わからない。ハーディンがあなたのところへ来たなんて信じられないわ。というか、誰に対しても、彼が助けを求めるなんて」

「こんなこと言いたくないけど、ぼくが最初に会ったときのハーディン・スコットとはまったくの別人だよ。ぼくをハグしようかなんて、冗談まで言っていたんだから」

ランドンが声をあげて笑うのでつい、つられて笑ってしまった。「まさか、うそでしょ!」どう考えたらいいのかわからないけど、やっぱりおかしい。

笑いがようやくおさまると、わたしはランドンに思いきって質問してみた。「彼がわたしを愛してるって、あなたはほんとうに信じる?」

「ああ、信じてるよ。きみが彼を許すべきかどうかはわからないけど、これだけは言える。ハーディンはほんとうに、心からきみを愛してる」

「でも、彼はうそをついたし、わたしを笑いものにしたのよ─愛してるって告白してくれたあとだって、ふたりのあいだに起こったことすべてをお仲間連中にべらべらしゃべってた。それから、わたしがようやく過去を忘れて前に踏み出そうと思うやいなや、彼はモリーと寝たと言ったのよ」

いまにも涙がこぼれそうになる。わたしはナイトスタンドにあったペットボトルをつかみ、気を紛らわせようとひと口飲んだ。

 

「傷付けるための嘘」……似たもの同士の2人

「モリーとは寝てないよ」

わたしはランドンを振り返った。「うそ、寝たわよ。だって、ハーディンがそう言ったもの」

ランドンはデリバリーの容器を置いて首を横に振った。

「きみを傷つけるためにそう言ったんだよ。そんなこと知っても、たいして変わりはないだろうけど。きみたちはふたりとも、自分がやられたと思うと、似たようなことでやり返すよね」

彼を見つめながら最初に頭に浮かんだのは、ハーディンはすごいということ。だって、ステップブラザーにさえ、うそを信じさせることができるんだから。

だけど、ハーディンが実はモリーと寝ていなかったとしたら? ほんとにそうだったら、彼を許す方向に気持ちを切り替えられる? 絶対に許すつもりはないと決めたはずだったのに、彼のことを頭から振り払うことができなかった。

そんなわたしをあざわらうように、スマホが着信で光る。見ると「誕生日おめでとう、美人さん」というトレヴァーからのメッセージだった。

わたしは、ありがとうとすぐに返信してからランドンに向き直った。「もうすこし時間が必要なの。いまは、何をどう考えたらいいのかわからない」

彼はうなずいた。「そうだよね。で、クリスマスはどうするの?」

「これよ」空になったデリバリーの容器と電子書籍のリーダーを手振りで指す。

ランドンはリモコンを手に取った。「実家には帰らないの?」

「ここにいるほうが、実家よりも落ち着けるの」

その台詞がどれほどみじめで情けないことか、それは考えないようにした。

「クリスマスにモーテルでひとり過ごすなんてだめだよ、テッサ。ぼくの家に来るといい。泊まれるよう、母がいろいろ買っておいたはずだ、あの……」

「わたしの生活がぐちゃぐちゃになる前に、ということ?」

半分笑いながら言うと、ランドンも調子を合わせてうなずいた。

「ハーディンが明日には発つだろうから、アパートメントで過ごそうかと思ってるの……といっても、寮に入るまでのあいだだけ。できれば、彼が帰国する前にそうなってほしいんだけど。そうじゃなかったら、いつでも、このすてきなモーテルに戻ってこれるわ」

これほどとんでもない状況は、冗談にでもしないとやってられない。

「うん……そうすべきだね」ランドンはテレビを見たまま答えた。

「そう思う? 彼が現れたりしたらどうしよう?」

ランドンは画面を見つめたまま、うなずいた。「ハーディンはロンドンにいる。そうなんだろう?」

「ええ、そのとおり。いずれにせよ、契約書には賃貸人としてわたしの名前も載っているんだから」

わたしたちはテレビを見ながら、ダコタがニューヨークへ行ってしまうという話をした。彼女がそのままあちらにいるなら、ランドンも来年にはニューヨーク大学へ転学することを考えているらしい。

彼のためには喜ばしいけど、やっぱりワシントン州を離れてほしくない─もちろん、そんなことは黙っておいた。九時になってランドンが帰ると、わたしはベッドにころんと横になり、電子書籍を読みながら眠りに落ちた。

 

次回、今年のクリスマスは一人で過ごそうと決め、ハーディンのいないアパートに戻ったテッサ。しかしそこに現れたのは、彼と……!?

 

 

【参考】

アナ・トッド(2016)『AFTER season2 壊れる絆 1』(小学館文庫)

 

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