アイドルが結婚してはいけない理由~心理学者・平松隆円のモテ女子講座~

大学で教鞭をとる心理学者の平松隆円が、世の中のモテと恋愛について語る本連載。今回は、「アイドルの結婚はなぜタブーなのか?」について語ってみたいと思います。
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©gettyimages

アイドルは結婚してはいけないのか?

2017年6月17日におこなわれた、人気アイドルグループAKB48の49枚目のシングルのセンターを選ぶ選抜総選挙。そこで20位という、本来であればあまり話題にならないはずの順位だった須藤凜々花さんが注目を集めました。

理由は、アイドルとしては掟破りともいえる“結婚宣言”があったから。須藤さんの結婚宣言に限らず、アイドルに恋人の存在が発覚すると大きな批判を集めます。

そもそも、どうしてアイドルは、恋人がいたり、ましてや結婚をしたりしてはいけないのでしょうか?

 

偶像としてのアイドル

よく、アイドル論などで語られるのは、アイドルが“偶像”であるということです。

偶像とは、もともとの意味は人形で、神仏の姿ををかたどった、信仰の対象となる像を意味します。つまり、お寺に安置されている仏像が偶像なんです。

そして、国語辞書的にいえば、憧れや崇拝などの対象となっているひとや物事を“偶像”と呼んでいます。憧れの対象なので、そこには自分の理想が投影されるんです。

たとえば、毎日の通勤や通学の電車のなかで出会うイケメンは、外見の情報だけしかないため、「かっこいいなぁ」くらいしか思いません。

ですが、もし共通の友人がいることが判明し、その友達から「高校のとき、野球で甲子園出たんだよ」とか「海外に1年くらい住んでたらしいよ」なんてことを聞かされると、どうでしょう?

直接会ったわけではないのに、自分の中で勝手なイメージを作り上げて、「付き合いたい!」とまで思ってしまうようになるかもしれません。

テレビの中のアイドルも、同じなんです。直接会ったわけでもないのに、いろいろな情報をもとに、自分の理想のひととして作り上げてしまっているわけです。ビジネス的にいえば、“アイドル・ブランディング”ともいえます。

「トイレに行かない」と「恋人がいない」は同じ?

ひと昔前なら、アイドルはその偶像性を高めるために、徹底的なイメージ作りがされていました。そのため、恋人の存在はもとより、「食事をしない」「トイレにすら行かない」といったことが公言されていました。

今では、アイドルがトイレに行かないなんて信じているひとはいませんよね? ですが、恋人がいるという事実となると、ちょっと話は別。

もちろんアイドルだって人間なのですから、恋人がいるであろうことくらいは想像できます。ですが、その事実を知らされると興ざめします。

たとえていうなら、テーマパークの着ぐるみに“なかのひと”がいることは誰だって知っていますが、その事実を公式に知らせてはいけないのと同じです。

 

育成ゲームとしてのアイドル

AKB48は、“会いに行けるアイドル”をキャッチフレーズにスタートしました。コンサートだけでなく、握手会など、アイドルを身近に感じることができる仕掛けが多く用意されています。「アイドルになりたいとがんばっている女の子を、ボクが応援しよう」というのが、コンセプトだったわけです。

実際、今でも年に一度行われる“総選挙”では、新曲シングルのセンターに立つために、ファンにCDを購入してもらい、そのCDについている投票券で自分に投票してもらう(=応援してもらう)ことが必要です。

ファンからすれば、自分が普通の女の子をトップアイドルにさせた自負(心理的満足度)があります。これはある意味、育成ゲームにハマる心理と同じです。自分が課金をしてキャラクターを育て上げるのと、CDを大量に購入してひとりの女の子に投票する行動は、よく似ていますよね。

そう考えると、せっかく育てたキャラクターが、何かの理由で突然バグってデータが消えたり、規約の変更でステータスが下がったりすると、腹が立ちますよね。「せっかくここまで育てたのに、なんてことしてくれるんだ!」と。有料アイテムを購入したりしていれば、なおさらです。

今回の、須藤凜々花さんもそう。前回、40位台だった彼女を“課金”して20位まで押し上げたファンからすると、“AKB48という育成ゲーム”のなかでは、恋愛禁止というルールがある以上、結婚というのは“起こるはずがない出来事(=バグ)”だったわけです。

そりゃあ、ファンは怒って当然ですよね。

 

アイドルの交際と親心

もう一つ、別の見方をしてみましょう。

アイドルがある意味で育成ゲームであるとするならば、子育ても同じように育成ゲームとしてみることができるかもしれません。

ゲームというと語弊がありますが、“アイドル=育成ゲーム=子育て”という構図を作るためにあえて繋げて考えると、アイドルを応援する行為は、ある意味で、子育てとみなすこともできるわけです。

じっさい、AKB48に所属する女の子たちに限らず、世の中でアイドルとして活動している女の子には10代の子もたくさんいます。たとえば自分に子どもがいたとして、「通訳になりたい」「客室乗務員になりたい」というのと同じように、「アイドルになりたい」という夢を応援しているわけです。

アイドルの応援を子育てと考えたとき、もし自分の子どもが突然、「この人と結婚します!」なんて言ってきたらどうしますか? 祝福して受け入れるという人よりも、「バカヤロー!」と反対する人がほとんどだと思います。

つまり、自分が育ててきたアイドルが突然、結婚宣言するのは、自分の娘(息子)がどこの誰かわからないオトコ(オンナ)に横取りされるのと同じ。

そりゃ、やっぱりファンからすると、怒って当然です。

 

いまのアイドルが恋人を作ったり、結婚したりしてはいけないのは、たんなる疑似恋愛の対象としての偶像だからではなく、そこに“育成ゲーム”としての要素や“疑似子育て”の要素があるからなんですね。

一人の女性としての幸せを考えれば、結婚というのはおめでたいことです。しかし、これらの要素がある限り、みんなに祝福されて結婚するというのは、アイドルにとっては難しいことなのかもしれませんね。

 

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※Getty Images