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「美文字」だと得する理由…綺麗な字が与える印象~心理学者・平松隆円のモテ女子講座~
平松隆円R.Hiramatsu
よく言われることに、「字が汚いのは仕方がないから、せめて丁寧に書くこと」というのがありますよね。
筆者も、同じことを就職活動中のゼミの学生や試験の時などに、よく言います。
一つには、読んでもらう相手のことを考えて、“相手が読みやすい文字で書くべき”であるから。ですが実は、それ以上に大事なことは、ひとは書かれた文字から、それを書いたひとの印象をつくってしまうからなんです。
字が綺麗な女子に抱く印象
筆者の周囲のひとたちに、「字が綺麗な女子ってどう思う?」とたずねてみました。
すると、同性か異性かに関係なく、たいてい返ってくる答えは、「几帳面な性格」とか、「親にきちんとしつけられている」とか、「頭がよさそう」とか、「しっかりしてそう」というもの。
これが女子ではなく、「字が綺麗な男子ってどう思う?」という質問であっても、同じような答えだと思います。つまり、「字が綺麗なことに対して、何とも思わない」というひとは、ほとんどいないんです。
しかも、綺麗な字を書くひとへの印象は、肯定的なものばかり。字が綺麗だから、ずぼらだとか、だらしがないという印象は持たないんです。
“ステレオタイプ”としての印象
もちろんこれらは、あくまでも印象。イメージでしかありません。いくら字が綺麗でも、頭がいいとは限りませんし、しっかりしているとは限りません。
何かの特徴に対してひとがもつ印象は、思い込み、つまり、“ステレオタイプ”です。ステレオタイプとは、人々のなかで共通して存在する、“単純化されたイメージ”のことです。
思い込みなので、必ずしも当たっているとは限りません。ときには大きく間違っていて、それが差別や偏見という問題につながることもめずらしくありません。
では、どうしてひとはステレオタイプによって誰かの印象を決めてしまうのでしょうか?
はじめて会った人とのコミュニケーションは面倒?
たとえば人間関係において、本来は、相手とじっくりと付き合ったうえで、相手がどんなひとなのかを判断するべきです。ですが、それでは、ものすごく時間がかかりますよね? それに、やっぱり面倒。
もちろん、時間がかかって面倒というだけではありません。
初めて会うひとがどんなひとかわからなければ、付き合い方(敬語で話すべきかどうかなど)がわからず、上手くコミュニケーションをとることができません。
また、場合によっては、自分に危害を加える可能性のあるひとなのかもしれず、相手のことがよくわからない段階では注意が必要です。
そんな理由から、ひとは第一印象、つまり“見た目や話し方”をもとに、相手がどんなひとなのかを判断し、コミュニケーションの方法や程度を決めるのです。
経済原理としての“ステレオタイプ”
そこで活きてくるのが“ステレオタイプ=単純化されたイメージ”。ひとは少ない情報から多くを判断するため、よく知らない相手のことを型にはめて考えます。その型がステレオタイプというわけです。
文字についても同じこと。書かれた字の綺麗さや丁寧さから、それを書いたひとのことを推測して、どういうふうにコミュニケーションをとるべきかを決めます。そもそも、人間関係を築く必要すらないと判断するかもしれません。
ステレオタイプは、これまでひとが生きてきた社会の歴史のなかで、作り上げられてきたもの。
あながち、社会の中では間違いではないことも多く、それゆえ結果的に、多くのひとがそのステレオタイプを捨てられないというわけです。
“ステレオタイプ”でのネガティブな印象はもったいない!
つまり、綺麗な字や丁寧な字を書くひとを、緊張面な性格とか、親にきちんとしつけられているとか、頭がよさそうとか、しっかりしてそうと感じるのは、みんなが共通して持っている印象です。
本当は、緊張面な性格であったり、頭がよかったり、しっかりしているのに、字が汚いだけでそう思われないのだったら、すごくもったいないことですよね。逆に言えば、字が綺麗なだけで、すごくポジティブな印象を持ってもらえるということ。
もちろん、深い仲になれば、そんな印象よりも実際の性格に目が向くようになりますが、「第一印象が大事な出会いの場」では、字が汚いことによって損をすることだってあり得ます。
どうでしょう? 婚活の第一歩として、ペン字を習いはじめるというのも、案外有効なのかもしれませんね。