浮気証拠になるもの・ならないもの「慰謝料をとる」ために必要な要件は?

「旦那(嫁)に浮気をされるかも……」なんて不安に駆られたことはありませんか? 本当に浮気をされてしまってから動き始めたのでは遅いかもしれません。事前に法的な知識を押さえておくのも大切です。今回は、レイ法律事務所所属に所属している弁護士の松下真由美先生にお話を伺ってきました。
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1:離婚で慰謝料をぶんどるのに、浮気の証拠はどれくらい必要?

(1)「浮気の証拠がない」と慰謝料どころか離婚もできない?

結婚相手が浮気をしたらショックですよね。「慰謝料とって離婚してやる!」と思う人も多いかもしれません。でも、慰謝料ってどんな条件が揃えばとれるんでしょうか? 相手が認めなかったら……?

浮気され損になったらイヤですよね。レイ法律事務所に所属し、離婚、セクハラ問題等の男女トラブルを中心に取り扱う弁護士の松下真由美先生にお話を伺ってみました。

 

松下:裁判で離婚を争う場合、法律が定める離婚事由(離婚が認められる理由)は以下の5つです。

・不貞行為(770条1項1号)※浮気のこと
・悪意の遺棄(同条項2号)
・3年以上の生死不明(同条項3号)
・強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと(同条項4号)
・そのほか婚姻を継続し難い重大な事由があること(同条項5号)

不貞行為、すなわち浮気を理由に離婚しようとする場合には、やはり浮気の証拠が必要になります。

ただ、これはあくまで裁判になった場合の話。お互いが合意すれば、協議離婚は成立します。

また、たとえ浮気の証拠がなくても、DV等、ほかの理由とその証拠があれば、離婚は認められることになります。

離婚の理由が浮気しかなくて、その証拠がなく、お互いが合意しない場合には、すぐに離婚することは難しいでしょう。

どうしても離婚したい場合には、たとえば財産分与のやり方や慰謝料の支払いなど、ほかの離婚条件を譲る必要があるかもしれません。

(2)「浮気の証拠写真」はどうやって撮ればいい?

浮気の証拠がないと離婚するのは難しい様子。だったら離婚のために浮気の写真を撮って証拠としたい、と考える人もいることでしょう。しかし、一歩間違うと法を犯してしまうのはあなたの方になってしまいます。これに関しても、松下先生にお話を伺ってみました。

 

――犯罪になるような写真の撮り方や犯罪にならない写真の撮り方などがあれば教えてください。

松下:写真を撮る際、通常衣服に隠れている下着や身体を撮影したような場合には、盗撮・のぞき行為として、迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に該当する恐れがあります。

さらに、撮影のために、人の敷地に勝手に侵入した場合は、住居侵入等罪(刑法130条)に該当する恐れがあります。

また、人の住居の中等、公共の場所以外を撮影した場合は、プライバシーを侵害したとして、民事上の損害賠償請求をされる恐れもあります。

不倫の証拠を押さえる場合には、公共の場所や許可を得た場所で撮影し、ホテルなどの宿泊施設に入る瞬間や、出てくる瞬間などを押さえるようにしましょう。

 

2:ハードル高くない!? 浮気相手から慰謝料をとるために必要なもの

浮気をされたら、慰謝料請求を視野に入れる人も多いことでしょう。しかし、「浮気をされた!」と言っているだけでは、慰謝料を請求することはできません。

そこで、慰謝料請求をするのに必要な物を、引き続き松下先生にお伺いしました。

(1)浮気の証拠となるものは?

――相手から慰謝料を取るにはどうすればいいのでしょうか?

松下:慰謝料をとるには、不貞行為の証拠が必要になります。

――証拠写真の取り方は上述しましたが、そもそも浮気の証拠とはいったいどのようなものなのですか?

松下:不貞行為の証拠として典型的なのは、不貞行為そのものの写真やホテルなどの宿泊施設にふたりで入る瞬間、ふたりで出てくる瞬間の写真です。それに加えて、本人の自白や、明らかに肉体関係があったことを匂わせるLINE等のやり取りも証拠になりえます。

(2)不貞相手の名前や住所

――上述の証拠を押さえたとして、これで慰謝料請求の準備が整ったということになるのでしょうか?

松下:浮気相手が支払うと言えばいいですが、相手がどうしても慰謝料を支払わないと争った場合には、裁判をするしかありません。その場合には、訴状を相手方に送るために、相手の名前や住所が必要になります。

 

3:えっ、これじゃダメなの!? 浮気の証拠になりそうでならないもの

浮気の証拠がどういったものか紹介しましたが、「ひとりで証拠を集めた場合、浮気の証拠となっていない場合がある」ってご存じでしたか? どういったものが証拠となり、どういったものが証拠とならないのか、松下先生に教えていただきます。

(1)親しげなLINE

松下:親しげなLINEのやり取りなどをお持ちになる方がいるのですが、それ単体では証拠として認められない場合があります。“肉体関係がないと基本的には不貞行為に該当しない”という考え方が一般的です。

なので、明らかにふたりで泊まったり、旅行に行ったりしたことがわかるやりとりであれば証拠になりえますが、その場合でも、そのやりとりと整合するほかの証拠(領収書等)や自白も必要になってくるでしょう。

(2)ラブホテルの領収書

松下:ラブホテルの領収書や薬局で買ったコンドームのレシートなども証拠としてお持ちになる方がいます。しかし、それだけではやはり不貞行為の証拠として認められない場合があります。

具体的な不貞行為が特定できず、たとえば「ひとりで利用しただけ」「ホテルは女子会やイベントに利用しただけ」といった言い訳が通ってしまう可能性が考えられるからです。やはり、それ単体だけではなく、そのほかの証拠も必要でしょう。

(3)配偶者の証言

松下:また、配偶者が不倫を認めていても、不倫相手は一切認めない場合があります。この場合には、どちらの供述が信用できるかという問題になってきます。供述と一致するほかの客観的な証拠があるか、証言に具体性があるかなどから、供述の信用性が判断されることになります。

配偶者の自白があっても、それが信用できないと判断された場合は、不倫相手への慰謝料請求が認められない場合もあります。

(4)友人の証言

松下:「肉体関係がないと不貞行為に該当しない」という考え方が一般的だと上述しました。また、証言は信用できるものでなければなりません。

たとえば、“相談者の友人や知人が若い女性と一緒に歩いている配偶者を見た”といった証言も、それ単体では証拠として認められない場合があります。その証言と整合するラブホテルの領収書や配偶者の自白などが必要になってくるでしょう。

(5)ツーショット写真

松下:浮気相手とのツーショット写真も、その内容によっては不貞行為として認められないものがあります。飲食店やパーティー会場でのツーショット写真だけでは、肉体関係があったことを立証することは難しく、これもほかの証拠が必要になってきます。

配偶者の自白やラブホテルの領収書、ふたりでラブホテルに泊まったことが分かるLINEなどがあるといいです。

(6)GPSの位置情報

松下:GPSの位置情報なども、それだけでは証拠として認められない場合があります。GPSの信号がラブホテルの駐車場を指し示していても、上述の『(2)ラブホテルの領収書』と同様に「ひとりで利用しただけ」などといった言い訳が通る可能性が考えられるため、これ単体では配偶者が不貞行為を行ったと認められない場合があります。

また、もしもGPSの発信器を浮気相手の車などに装着した場合、浮気相手から「プライバシーの侵害」として訴えられる恐れもあります。

(7)浮気相手へのプレゼント

松下:浮気相手へのプレゼントも、それだけでは不貞行為の証拠として認められない場合があります。何度も上述していますが、これも「肉体関係がないと不貞行為に該当しない」という考え方が一般的なためです。プレゼントだけではなく、肉体関係があったという、ほかの証拠が必要となります。

(8)配偶者の疑わしい行動を記録しておいたノート

松下:「配偶者の行動が怪しいと感じたら、日記をつけておくといい」という情報を耳にした人もいるかもしれません。しかし、具体的な不貞行為の内容が特定できない以上、やはりこれ単体では不貞行為の証拠として認められない可能性が高いです。

ただし、配偶者があまりに家に帰って来ないなどの事情があると、離婚事由のうち「悪意の遺棄」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性はあります。離婚をしたいと考えている場合には、そのような記録もひとつの材料になるかもしれません。また、配偶者に対しては、慰謝料請求が行える可能性がでてきます。

 

4:訴えを起こす側に浮気をした事を証明する責任アリ!

いかがでしたか? 今回は弁護士の松下先生にお話を伺い、浮気の証拠や慰謝料請求に必要な条件をご紹介しました。

浮気を立証することはなかなか難しいようです。民事訴訟の場合、原告側に証明責任があります。わかりやすく言うと、「請求をする側が配偶者が浮気をしたことを証明しなければいけない」ということです。

ですので、「浮気が疑われる」というだけでは慰謝料請求はできないと思った方がいいでしょう。確実に浮気をしたといえる証拠が望ましいといえそうです。

 

【取材協力】
松下真由美先生・・・弁護士。レイ法律事務所所属。第一東京弁護士会所属。
離婚、セクハラ問題等の男女トラブルを中心に取り扱うほか、介護・相続等、家庭の中で起こるトラブルを得意分野とし、メディア出演やセミナーの開催も行っている。