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婚約破棄の慰謝料は?正当事由になりうる婚約破棄の男女の理由と割合

並木まき

並木まきM.Namiki

目次

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1:婚約破棄ってどのくらい割合で起こること?

プロポーズを経て婚約に至っていたのに、なんらかの事情により、結果として“破棄”に至った……という話。時折、耳にしますよね。

(1)婚約破棄する人の割合はどのくらい?男女比は?

婚活支援サービスを展開する「パートナーエージェント」が、20~39歳の男女2,400人に対して実施した「交際相手から突然の別れ話に関するアンケート調査」によると、全体の47.5%が交際相手から、突然別れを切り出されたことがあるとのこと。

さらにその時期を調査すると、「結婚が決まった後」と答えた人が1.5%という結果になっていました。

数はそれほど多くないものの、結婚が決まった後に突然別れを告げられる、ということはあるようです。必ずしも「婚約をしたから関係は安泰!」とは、言い切れないのですね。

(2)婚約破棄されて慰謝料がもらえる確率は?

後ほど詳しく解説しますが、婚約破棄が不当なものであれば、慰謝料を請求できる可能性は高くなります。

つまり、相手から婚約を破棄されたとき、その理由が社会通念に照らし合わせて「あまりにも非情すぎる」「いくらなんでもありえない」と言いたくなるようなものであって、かつ法律の解釈に照らし合わせて「これは不当だ」ということになれば、ちゃんと慰謝料が発生するのです。

(3)婚約破棄したい…女性のマリッジブルーは正当事由になる?

婚約期間中には、大なり小なり“マリッジブルー”になってしまう人も珍しくはありません。

しかし「マリッジブルーだから、結婚をやめたい」と素直に言っても、婚約を破棄するだけの正当な理由になるかといえば、それは微妙なところです。

互いが合意して婚約を解消することはできても、一方が「解消したくない」とゴネれば、話し合いはドロ沼に……。

相手との結婚を考え直したくなるような正当な事由として、法律上で認められるようなものでなければ、単なるマリッジブルーだけでは、正当な理由としては認められにくいでしょう。

 

2:婚約破棄の慰謝料は?弁護士に聞いてみた

というわけで法律のことは、弁護士に聞くのがイチバン!

ここからは、婚約破棄に関するさまざまなケースについて、アトム市川船橋法律事務所弁護士法人の代表弁護士である高橋裕樹先生にうかがっていきます。

まずは、個別の事例を見る前に、まずは、“婚約破棄”と“慰謝料”に関する高橋先生の見解からご紹介します。

高橋弁護士「婚約=婚姻予約というのは、将来結婚することを目的とする契約です。これを不当に破棄した場合、慰謝料の支払い義務を負うというのが裁判所の考え方です。

もっとも、“結婚しようね”と話していたとか、親に会ったことがあるということだけで、婚約に至ったと判断されるわけではありません。

なので、慰謝料がいくらかという問題以前に、「そもそも婚約していたといえるのか」という点が争いになることも多いです。

そして、婚約に至っていると当事者が認識している場合で、性格の不一致などで婚約を解消するようなケースでは、当事者間で男女関係の清算の協議をし、婚約破棄についての責任があると考えられる側が、協議で決まった慰謝料を支払うパターンが圧倒的に多いと思います。

ここでの慰謝料の金額は、まさに当事者が好きに設定できるので、例えば5万円でいいよということもあれば、1,000万円支払うという合意に至るケースもあります。

一方で、慰謝料額の協議がまとまらず、裁判にまで行ったケースですと、その慰謝料の相場は100万円から200万円くらいが一般的です。

その際に考慮されるのは、

・挙式準備や両親・親族への紹介といった婚姻成立に向けた準備行為
・暴力や他の異性との交際といった破棄の原因の不当性
・交際期間や妊娠、当時の年齢等の諸事情
です。
なので、本当にケースバイケースですし、同じような案件でも、判決を書く裁判官のセンスで金額がまったく変わってくることもあります。以下のコメントは、あくまで私の経験を踏まえた感覚として、参考にしていただければと思います」

 

3:婚約破棄をする正当事由のケーススタディ

では上記の前提をもとに、さっそく高橋弁護士に個別の事情ごとに、お話をうかがいます。

(1)結納し、式場を押さえたあとに、彼氏に別の女がいて自ら婚約破棄を申し出た場合

高橋弁護士「婚約の不当破棄の場合、式場を押さえたり、結納を済ませていたりというケースはかなり多いです。また、他の異性と交際していたことが婚約破棄の原因になっていたのであれば、慰謝料自体は認めらえると思います。しかしそこまで特異なケースではないと思いますので、慰謝料の金額としては100万円前後ではないかと思います」

(2)結納し、式場を抑えたあとに、彼氏から別の女性と結婚したいと婚約破棄を言い渡された

高橋弁護士「こちらも、上記(1)のケースと、本質的には変わらないと思います。浮気相手の存在を気付いたのか、それとも浮気相手がいて、そちらと付き合いたいと自分から言い出したのか、というだけの違いですね。異性との交際が、破棄の原因になっているという枠は同じです。ですので、金額も(1)のケースと変わらないと考えられるため、100万円程度ではないかと思います」

(3)結婚を前提に2年付き合っていた相手に妻子がいることが発覚した

高橋弁護士「結納や婚約指輪の交付などをしていない状況で、単に結婚前提で2年付き合っているという前提であれば、婚約に至っていないという解釈もできる事案だと思います。

ですので、男性側がそもそも婚約していないと争うこともあり得るかと思います。その意味で、上記(1)や(2)の事例とは違うケースです。
単に、“交際している途中で他の異性との交際を始めた”、“他の異性と性交渉に至った”、もしくは、“自分と交際する前から他の異性と交際していた”、”以前から婚姻していた”というだけの事案では、いずれも慰謝料はまず取れないと考えていただいたほうがよいと思います。
中には慰謝料をとれるケースもあるとは思いますが、ほとんど費用倒れと手間倒れになってしまうのが現実です。
考え方としては、結婚もしくは婚姻予約(≒契約)という、法律的に保護される状態に至った男女間において、初めて慰謝料が認められるのであって、単に“付き合っていて振られた”、“他の異性のもとに行ってしまった”というケースでの慰謝料は、望めないというのが法律的な解釈です」

(4)結婚式は済ませたが「やっぱり結婚したくない」と相手から婚約破棄を申し出された

高橋弁護士「これは婚姻届を提出していないので、法律的には婚姻していないということになりますが、限りなく離婚に近い婚約破棄のように思います。

結婚式まで済ませているのであれば、通常は、あとは婚姻届を提出するだけという状態が多いと思いますので、婚姻予約だけでなく、婚姻に向けた準備行為も済ませている状態と言えるでしょう。

このケースであれば、慰謝料相場の上限である200万円を超える慰謝料が認められる可能性も高いと思います。

さらに、結婚式の費用負担分や結婚指輪の代金、その他、結婚前提で買いそろえた家財についても、賠償請求できる可能性があると思います」 

 

4:婚約破棄したい理由はマリッジブルー?婚約破棄したい男女の理由10選

実際に“婚約破棄”を経験した人たちの理由はさまざまです。

そこで、これまでに「婚約破棄したい……」と考えたことのあるという10名に、その理由を直撃してみました。

(1)相手のマザコンがわかり…

「2年前にプロポーズされて、婚約までしていた彼がいましたが、結婚式の準備を進める段階になってから、重度のマザコンであることが発覚しました。

交際中の私たちは、お互いの家族と交流するようなお付き合いをしていなかったのと、彼がひとり暮らしをしていたので、母親とどのくらい親密なのかは、婚約するまでわからなかったんです。

結婚式の準備だけでなく、新生活の準備でも、ことあるごとに母親の意見を持ち出してきて、私の意見は後回し。

たまりかねて、慰謝料を払う覚悟で婚約破棄を申し出ました。結果的には慰謝料なしで婚約を解消できました」(Wさん・30歳女性)

(2)彼の母親がひどい過干渉でした

「結婚するつもりで付き合っていた彼に晴れてプロポーズされ、ウキウキだったのもつかの間……。彼の母親がひどい過干渉で、私がノイローゼ状態になってしまったんです。

彼の母親は高齢で、ひとり暮らしだったのですが、結婚と同時に同居をするよう強要されて、私がギブアップ。

彼にはかなり強く罵倒されましたが、断固とした姿勢で婚約破棄を申し出ました」(Aさん・35歳女性)

(3)彼の勤務先が倒産してしまい…

「プロポーズから結婚式までは1年あったのですが、その間に、彼の勤務先が倒産してしまいました。

結婚式や新生活には何かとお金がかかるのに、そんなときに仕事がなくなってしまい、一時は婚約破棄をすべきか、本気で悩みました。

でも、彼が必死で転職先を探している姿を見て、“これからの人生をともにするって決めたのに、私って、なんてひどいことを考えていたのだろう……”と、反省しました。

結果的に、婚約破棄は申し出ませんでしたが、一時は真剣に悩みましたね」(33歳女性)

(4)他の女性とデートしているのを知り…

「婚約中なのに、“他の女性と彼がデートをしている”と知ったときには、思わず婚約破棄も考えました。

私の友達が、たまたま、他の女性と談笑しながら食事をしている彼をレストランで見かけ、写真を撮ってLINEしてくれたんです。

その日、彼は私に“仕事で遅くなる”と言っていたので変だなと思い、帰宅したであろうころに電話して問いただすと、あっさり嘘を認めました。

でも、“浮気はしていない”“肉体関係はない”と身の潔白を主張するし、“結婚前に、ほんの少し遊びたかっただけなんだ”という説明を受け、彼の言葉を信じることにして、予定通り結婚しました」(33歳女性)

(5)二股が判明

「彼にプロポーズされ、結婚式の準備を進めていた矢先のこと。

あるとき、見知らぬ女からSNSのメッセージアプリ経由で、“私の彼と別れてください!”と、謎の連絡がありました。

彼が浮気をしているなんて思いもしなかった私には、“寝耳に水”すぎて焦りましたが、その女と何度かやりとりしていると、どうやら彼が二股をかけてることが判明しました。

数日後に彼を問いただすと、最初は否定したものの、私が証拠を突きつけると、二股を認めました。

“あっちとは遊びだから、別れるつもりだった”とは言われましたが、そこから数か月は、彼のことを信用していいものかずっと迷っていました。結局、婚約破棄には至らなかったものの、結婚式は半年延期しました」(30歳女性)

(6)隠れ借金が発覚

「1年半付き合った彼女と婚約していましたが、婚約期間中に彼女の借金が発覚し、結婚を取りやめたことがあります。

借金の額は300万円ほどでした。

普通の事務員をしている子だったので、事業とかの借金ではありません。でも、何のために借りたのかも、最後まで教えてもらえませんでした。

僕としてはその子のことがすごく好きだったので、ふたりで借金を返していけばいいかな……とも思っていましたが、僕の親や兄弟が全力で結婚を止めてきたので、周囲に祝福されない結婚をするのも気が引けて、結局、婚約破棄となりました」(32歳男性)

(7)親の反対

「友達からは評判のいい彼女だから、きっと親も気に入ってくれるだろうと思っていたのに、カミさんを初めて親に会わせたら、母親が猛反対してきました。

結婚はふたりだけの話ではなく互いの親も関係してくるので、婚約破棄も頭をよぎりましたが、母親に理由を聞いても“直感的に”としか言わず、腑に落ちなかったので、結局は強引に進めました。

でも案の定と言うか、うちの母親とカミさんは今でも犬猿の仲で、結婚して4年になりますが、ほとんど交流がありません」(39歳男性)

(8)思っていた人と違った

「うちの奥さんは、結婚が決まってから、本性を現してきました。

それまでは清楚な感じで、僕の言うことを否定せずにいつもニコニコと聞いてくれるような人だったんですが、婚約して、結婚式が目の前に迫ってきたころから性格が激変。

ちょっとしたことでもすぐ怒るようになり、しかも威圧的な口調で話してくるようにまで変わってしまいました。

このまま結婚していいものか……とだいぶ悩みましたが、婚約破棄を言い出す勇気がなく、結局はそのまま結婚してしまいました。

でも、予想通りですが、交際中の清楚な感じには二度と戻ってくれることなく、今は凄まじく怖い奥さんです……」(36歳男性)

(9)彼でいいのか迷いが…

「今の夫と結婚する直前、“この人で、本当にいいの?”という疑問がなぜだかふと湧いてきて、婚約破棄も考えるほどでした。

特に何かが嫌というわけではなかったんですけど、“もっといい人がいるんじゃないか”とか“本当に幸せになれるんだろうか”とか、漠然とした不安が大きかったですね。

私は当時、真剣に悩んでいたので、何人かの友達に相談すると、みんなに“それって、マリッジブルーじゃない?”と言われてしまいました。

結局、ただのマリッジブルーだと自分を言い聞かせ、予定通り結婚をしました」(31歳女性)

(10)他にいい人が登場し…

「結婚式まであと2か月というときに、当時の職場にどストライクなタイプの男性が転職してきて、あっという間に仲が急接近してしました。

しかも、向こうも私のことを好きになってくれたんです。でも私が婚約中の身であることは知っていたので、ずっと手を出さずにいてくれて、食事や飲みに行くだけのプラトニックな関係が続いていました。

でも、いよいよ式まであと1週間となったときに、私がどうしても気持ちを抑えられなくなり、彼に連絡して、一夜をともに……。

私は翌朝、婚約破棄を決意したのですが、彼から、“君はそのまま結婚したほうがいい。今日のことは互いの胸に秘めて、二度とふたりでは会わないようにしよう”と言われ、大泣きしながらお別れしました。

結局、婚約破棄は言い出さず、その彼とのことも胸に秘め、予定通りに結婚してしました……」(35歳女性)

 

5:婚約破棄で後悔…婚約破棄した人された人の悲喜こもごもな体験談5つ

さて、世間には婚約破棄をした人もいれば、された人もいます。

ここでは、そんな人たちの悲喜こもごもなエピソードを5選紹介します。

(1)自分から婚約破棄した彼女が、半年後に知り合いと結婚…

「社内恋愛をしていた彼女との結婚に向けて動き出したものの、どうしても一緒にいる将来像をイメージできなくて、僕がひどいマリッジブルーになってしまいました。

自分から婚約破棄を申し出て、すったもんだした挙句、慰謝料なしで了承してもらったのですが……。

ところがその半年後、僕も知る取引先の男性と、その彼女がまさかの電撃結婚。

自分から別れを告げたとは言え、衝撃的でした。

まわりの人たちは、はっきり口にはしないけど、その子が二股かけていたんだろうと思っているようでした。

同僚たちからも、さりげなく慰められることもあり、しばらくは職場での居心地が悪かったです」(Yさん・35歳男性)

(2)婚約解消の翌月に妊娠が発覚…

「私の場合、結果としては結婚をしたんですが、それは婚約破棄をされたあとに、妊娠が発覚したからです。

当時、前日までラブラブだった彼(今の夫)から、いきなり理由もなく別れを告げられ、結婚式場も私に無断でキャンセルされていました。

幸せの絶頂からドン底にまで突き落とされた私でしたが、なんとその翌月に妊娠が判明し、彼に連絡をしたところ、それならば、ということで、最初の予定通りに結婚することに。

でも未だに夫は、なぜ婚約破棄してきたのかについては、理由を語りません。

授かり婚になったので、どのみち結婚式は出産後にしようってことで、入籍だけ済ませました」(Uさん・28歳女性)

(3)婚約破棄された直後に、運命の出会いが!

「大好きだった当時の彼から、親の反対を理由に婚約破棄され、不幸のドン底を味わいました。

“うつ”のようになり、職場にも行けず、食べ物も喉を通らなくなってしまいました。あのころは、本当に辛かったですね……。

最終的に仕事も辞め、外出もせずに引きこもっていたのですが、そんなある日、コンビニにお菓子を買いに行ったら、中学生時代の同級生男性にばったり。

お互い故郷を離れて暮らしているのに、実は今の家が近いとわかり、なんとなく流れで、そのままウチで飲むことにしたんです。

そうしたら、その日から気分が嘘みたいに晴れたんです。結局、その彼と付き合い始めて、トントン拍子で話が進み、今年結婚しました。

今となっては、夫と結婚するために彼が振ってくれたんだとすら考えられるほど。運命って不思議だなと思います」(Rさん・34歳女性)

(4)いまだに暗黒から抜け出せない

「一度はプロポーズを受けてくれたのに、結婚式の3か月前になって、彼女の親から破談の申し入れがあり、婚約破棄されました。

慰謝料ももらいましたが、破棄された理由が、“俺に稼ぎがない”ということと、“将来性が期待できないから”と言われました。

ぶっちゃけ、そこまで他人にバカにされたことはなかったので、その言葉が今でも頭から離れず、俺の中で呪縛のようになっています。

そのことがあってから、女性と付き合う気にもなれず、飲み会なども面倒に感じて行かなくなりました。

仲間からは、早く暗黒の世界から抜け出すよう言われますが、ショックが大きすぎたのか、自分でもどうしたら前の自分みたいに明るくなれるのかわかりません」(Oさん・37歳男性)

(5)隠れ既婚者の裏切りから、ついに人間不信に…

「プロポーズもあり、婚約指輪ももらっていた彼は、実は別居中の妻がいる隠れ既婚者でした。

婚約まではスムーズだったのに、その先の結婚式準備や親への挨拶などに対してあまりにも消極的だったので、さすがに“変だな”とは思っていたのですが……。

案の定って、感じでした。

そんな人と結婚なんてできないし、その場で指輪を投げつけて別れてきましたが、それ以降、人間不信に陥ってしまい、今でも男性を信用できずにいます……」(Hさん・32歳女性)

 

6:婚約破棄しないに越したことはないけれど

婚約破棄と聞くと、特殊な事情がある人のすることだと思っている人も多いかもしれません。

しかし実際に婚約破棄に至った方々のお話を聞くと、極度のマリッジブルーなどによる破棄も、そこまで珍しい話ではない様子です。

ご縁あって婚約まで進んだならば、スムーズにゴールインできるのがベストではありますが、発想を変えれば、結婚したら簡単には離婚できないだけに、相手との将来を判断する最後のタイミングとも言えるのかもしれません。

婚約破棄しないに越したことはないけれど、婚約破棄によって別の幸せをつかんだ人がいるのも、また事実と言えそうです。

 

【取材協力】

高橋 裕樹・・・アトム市川船橋法律事務所弁護士法人  代表弁護士。岩手県盛岡市出身。2008年(平成20年)弁護士登録。千葉大学法経学部法学科卒業。

【参考】

「交際相手から突然の別れ話」に関するアンケート調査 – パートナーエージェント