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民事裁判にかかる費用や期間は?裁判の費用が払えないときにできること
水野 文也F.Mizuno
目次
隠す1:民事裁判の費用はどのくらい?誰が払うべきなのか…
結論からいってしまうと、民事裁判はお金がかかります。
訴える場合、いくらかかるかについては法律に規定され、裁判の種類ではなく、争う額によって費用は変わります。裁判所が出している「手数料額早見表」によると、裁判所に支払う申立手数料の額のおおよその目安は、以下のとおりです。
訴訟額100万円・・・10,000円
訴訟額500万円・・・30,000円
訴訟額1000万円 ・・・50,000円
訴訟額5000万円・・・170,000円
これはある種の基本料金のようなもので、これに加えて、相手に送る書類の郵送料、証人の旅費や日当など、さまざまな手数料が加わります。そして、最も負担になるのが、次の項で解説する、は弁護士を雇う場合の費用です。
なお、誰が支払うかについては、裁判に負けた方が支払うことになりますが、それは、あくまでも法律で定められている訴訟費用のみ。弁護士費用に関しては、勝っても負けても依頼主である自分が支払わなければなりません。
2:訴えられた…弁護士を雇うべきなの?弁護士費用の計算方法
(1)やはり弁護士に任せるべき
裁判は、訴えた側も訴えられた側も、相当なエネルギーを消費します。いずれの場合も、自分自身で裁判に臨むことはできますが、時間も労力もかかるため、生活に大きな影響を及ぼさないとも限りません。
仮に、何かのトラブルで自分が訴えられたとしたら、やはり訴訟のプロである弁護士を雇うのがベターでしょう。
敷居が高いと感じるかもしれませんが、最初の相談だけなら無料という弁護士さんも多いので、悩まず相談してみましょう。役所の無料法律相談を利用してもいいかもしれません。
(2)弁護士に支払う報酬は高額なの?
とはいえ、弁護士も商売ですから、費用がかかるのは当然です。しかも、その金額は安くないので、バカになりません。弁護士に支払う報酬には、いくつか種類がありますので、以下にまとめてみました。
【着手金】
正式に依頼した際に支払うもので、結果にかかわらず返金されません。経済的利益が大きいほど高額になります。相場としては、例えば離婚訴訟で20万円以上、遺産分割調停・請求で30万円以上、交通事故の示談交渉で10万円以上となります。
【報酬】
結果によって報酬額が変わり、経済的利益が大きいほど高額になります。依頼者の望みがかなったときのみに支払うので、「成功報酬」と言っていいでしょう。
【資料作成や債務整理】
遺言執行の手続きなど、1回程度で終了するような事務的な手続き依頼をした場合に発生する費用です。
【実費】
出張費や交通費、また通信費や申立印紙代、郵便代など、いわゆる経費と呼ばれるものです。この他に、日当がかかる場合もあります
(3)弁護士報酬の相場を知っておこう
2004年4月から、弁護士会の定める報酬規定は廃止されたので、弁護士によって報酬額が変わりますが、どの世界でも同じように、“腕利き”は高額とみていいでしょう。
それでも、一般的な相場というものがあります。日本弁護士連合会、通称「日弁連」がまとめた「2008年度アンケート結果版 アンケート調査にもとづく市民のための弁護士報酬の目安」には、さまざまな事案の相場がアンケート調査という形で記されています。今から10年前に実施されたものですが、物価変動が大きくないので現在でも参考になるでしょう。
3:裁判費用が払えない…裁判の費用が払えない場合にできること
(1)困ったときは法テラスに相談
訴えられたけど、裁判にかかる費用が払えない。そんなときは、途方に暮れてしまうかもしれません。でも、いつでも相談できる公的な機関「法テラス」があるので大丈夫です。
法テラスは通称で、正式な名称は「日本司法支援センター」。平成18年4月10日に、法務省所管の公的法人として設立されました。
その業務の中に「民事法律扶助業務」があり、そこでは経済的に余裕のない人が法的なトラブルにあったときに、無料法律相談や必要に応じて、弁護士・司法書士費用などの立て替えを行っています。
(2)訴訟費用の立て替えを利用できる条件とは?
法テラスの費用立て替えは、誰でも、また何に対しても、というわけではありません。その基準は公式ホームページによると、以下のとおりです。
1.収入等が一定額以下であること(単身者では月収18万2000円以下、4人家族では月収29万9000円以下が目安になります)
2.勝訴の見込みがないとは言えないこと
3.民事法律扶助の趣旨に適すること(報復的な感情、宣伝、権利の濫用などの訴訟の援助はできません)
4:民事裁判の期間は?民事裁判の流れとそれぞれの段階でかかる期間
実際の裁判はどのように行われるのでしょうか。その流れをまとめてみました。
(1)被告への送達
原告が訴状を提出すると、被告に訴状と証拠が送られます。ここで注意したいのは、反論するための答弁書催告状の扱い。答弁書を作成しないと、反論なしで原告の主張を認めたことになるので注意しましょう。一般的には、ここで早くも弁護士の登場となります。
(2)第1回期日
基本的に原告と被告が裁判所に出頭しますが、被告は事前に答弁書を提出していれば、1回目の期日には出席しなくてもかまいません。弁護士に依頼する場合も同様です。
(3)続行期日(弁論準備)
2回目以降は、裁判所が原告と被告の主張の整理を行っていきます。弁護士に依頼すれば、こちらも出席する必要はありません。
(4)尋問
弁論準備によって原告と被告の主張内容の整理ができたら、次に「尋問」を行います。本人尋問の場合、当事者に対するものですので、この日は裁判所に行かなければなりません。
(5)最終弁論期日
尋問の後に、原告と被告の最終意見をまとめるための「最終弁論期日」が入れられます。
(6)判決
すべての手続きが終了後、裁判所が判決を下します。ここも裁判所に行く必要はなく、弁護士が詳しい判決文を取り寄せてくれます。判決内容に不服がある場合には、判決書の受け取って2週間以内に「控訴」ができます。
(7)和解で終わらせることも
裁判には、原告と被告が裁判手続きの中で話合い、裁判を終わらせる和解があります。
原告がお金を請求しているとき、お互いに歩み寄り、支払い可能な金額まで減額するというのが代表的な例ですが、こうすると、原告、被告いずれも敗訴のリスクを避けられるほか、時間や労力の負担を軽減することができます。
和解案が著しく自分に不利と感じたら、とことん争うべきでしょうが、妥協の余地があれば、和解に応じたほうがいいという考えも。負ければ当然、和解の内容は関係なくなります。なお、和解は裁判中いつでもできます。
(8)裁判にかかる期間は?
裁判のおよその期間ですが、一般的に訴状が届いてから第1回目の期日まで1か月程度、2回目以降も1か月程度、審理が終結してから判決までの期間はまちまちながら、概ね1~3か月程度が目安となります。
「裁判所データブック2018」によると、2017年の民事訴訟でかかった期間は、平均で8.7か月。これは途中で和解になった訴訟も含みますので、判決までかかった訴訟では12.9か月と、1年以上の期間を要することも決して珍しくはないようです。
5:まとめ
裁判は、お金、時間ともに、思った以上にかかるもの。例えば、自分が訴えようとする場合、その金額とかかるコスト、時間を秤にかけて、弁護士を雇うのか、裁判そのものを起こすのかなどを、よく考えて判断しましょう。
【参考】