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「しかり」は古文でしか使わない?「しかり」の意味と今でもよくある使い方5つ
松田優Y.Matsuda
1:「しかり」とは?
「しかり」とは古くから存在する日本語。ですが、古文に出てくる言葉であるイメージが強いという人も多いでしょう。しかし、意外にも現代の日常会話でもたびたび使用されているなじみ深い言葉なのです。
私たちは日ごろ、どのようなシーンで「しかり」という言葉を使っているのでしょうか。
(1)「しかり」の意味
はじめに「しかり」という言葉の意味をご紹介します。
しか・り【▽然り/×爾り】
そのようである。そのとおりである。そうである。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
このように、「しかり」とは主に肯定する言葉として使われます。
奈良時代の和歌集「万葉集」に出てくる言葉で、すでに存在するもの・ことを指す「然(しか)」と、「有する」という意味を持つ「有り(あり)」というふたつの言葉からできています。
ふたつの言葉が合わさることで「すでに存在するものがある」という意味となり、「しかり」は「そのとおり」「そうである」という意味を表す言葉として扱われてきました。
(2)漢字では「然り」なの?「然りとて」とは?
「しかり」は「然」という意味から生まれた言葉であるため、漢字では「然り」と表記します。「然り」には「しかり」のほかにも「さり」という読み方もありますが、どちらの読み方でも同じ意味合いで使用されています。
前後の言葉に合わせて読み方が変わるので注意しましょう。
さらに「然り」という言葉が活用され、「然りとて」として使われることがあります。然りとての意味とは、
さり‐とて【▽然りとて】
そうだからといって。そうかといって。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
となり、ある物事を肯定したあとに、反する言葉を続ける際に用いる言葉として使われています。
2:ちょっと使ってみたくなる「しかり」の使い方4つ
普段の生活で「しかり」と使う人はあまり多く見かけませんが、意味を理解すれば日常会話にも使えるチャンスはたくさんあります。
(1)「しかるべき処置を取らせていただきます」
「しかるべき」という言葉は日常でもよく聞きますよね。「しかるべき」は直訳すると「そのとおりであるべき」という意味になりますが、会話では「当然の」や「ふさわしい」という意味として使用されます。
つまりこの例文は、「あなたが行ったことに対して当然の処置を受けてもらうよ!」という意味となります。ドラマ化もされた漫画『恨み屋本舗』では、恨み屋が復讐を請け負う際、毎回「しかるべく」と言うシーンが名物となっていました。
(2)「最近腕が太った気がする。足もまたしかり」
「またしかり」ということで、「~もまた同様」という意味になります。前の言葉と同じ意味を持たせたいときに使用できます。つまりこの例文で言えば「足もまたしかり」は「足も同じく太った気がする」という意味となります。
「太った」というマイナスワードを「しかり」を活用して削減すれば、気分が落ちずに済みますよね。武士っぽくてちょっとおもしろく聞こえます。
(3)「優しいからといっていい人じゃないし、その逆もまたしかり、でしょ?」
「しかり」という意味自体はそのままですが、前に「逆もまた」とつけることで、「逆も同じようなことが言える」という意味になります。
つまりこの例文は「優しい人がいい人であると限らないことと同じように、優しくない人が悪い人というわけでもない」という意味となります。優しくないと思っていた人がいい人だ!ってときがいちばん胸キュンしちゃいますよね♡
(4)「しかりです」
「しかり」を単体で使用する場合は、「そのとおりです」という肯定の意味として認識されます。上司や先方などに何かを尋ねられたときには、「しかりです」とキリッと答えてみましょう。しっかり者感をアピールできるかもしれません。とはいえ、正しい使い方ではありますが、日常生活では難易度高いかもしれないですね。
3:「しかり」の類語は?
「しかり」とは主に「そのとおり」という意味をもちます。類語としては「確かに」「いかにも」という言葉が挙げられます。
「またしかり」という言葉では、「同様」が類語に当たります。しかし「然り」と送り仮名が同じである「確り」には注意が必要です。「確り」は「しっかり」を漢字表現に変換した言葉なので、「そのとおり」という意味では使えます。
4:「しかり」の英語表現は?
英語ではどのように表現するのでしょうか?
これはそれほど難しく考えることはなく、単純に「Yes」や、「そのとおり」を意味する「Exactly」「Just so」が該当します。
「逆もまたしかり」には「The reverse is also true.」というイディオムがあります。
5:まとめ
「しかり」という言葉だけを見ると「古臭い言葉」という印象がありますが、「しかるべき(く)」「逆もまたしかり」という言葉は現在でも普通に使用されています。使い方次第ではフォーマルな言葉としてだけでなく、ユニークな言葉としても活用できるかも……。
「しかり」のしかるべき使い方をマスターして、粋な感じを演出してみるのはいかがでしょうか。