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派遣を辞めたい…契約上どうなる?派遣契約を途中で穏便に終わらせる方法

並木まき

並木まきM.Namiki

目次

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1:派遣を契約途中に辞めると損害賠償が発生する?

派遣社員として働いているときに、契約期間の途中で辞めると損害賠償が発生するのでしょうか? 生活に身近な法律問題に詳しいアトム市川船橋法律事務所弁護士法人の代表弁護士である高橋裕樹先生によると、ケースバイケースとのこと。

詳しくうかがっていきましょう。

高橋:「派遣社員も通常の正社員も、雇用契約に基づき就業する労働者です。そして、期間の定めのない雇用契約の場合、2週間前までに退職の申出をすれば自由に退職できます(民法627条)。

もし就業規則に“1か月前までに退職を申し出ること”などと記載されていても、2週間前までに申出をすればよいという民法の規定が優先します。そしてこの場合、なんら違法な退職ではないので、損害賠償請求も受けません。

一方、期間の定めのある雇用契約であるにも拘わらず、期間途中でやむを得ず退職を希望する場合、退職自体はできますが、損害賠償請求を受ける可能性があります。やむを得ない事由がない場合は、会社が認めてくれなければ、基本的に退職すること自体できません」

 

2:体調不良は理由になる?派遣を契約途中に辞めるときに使える理由5つ

つまり、期間途中で退職する場合には、「やむを得ない事情」が必要となるのです。そこで、派遣を辞める理由として妥当性のある事情を5選 つご紹介します。

(1)妊娠による体調不良

契約期間中に妊娠して、つわりがひどい、体調が悪くてとても働ける場合ではない……といった場合には、医師による診断書を提出したうえで、契約期間中でも円満に退職している人が見受けられます。

出産後の働き方も併せて協議するケースが多く、柔軟に対応してくれる派遣先も少なくないでしょう。

(2)病気による体調不良

単なる風邪などではなく、長期の治療が必要になるような重い病気が発覚した場合、これまでのようには働けなくなるからと、医師の診断書を提出し、話し合いを経て円満に退職している場合もあります。

(3)怪我による就業不能

交通事故などにより怪我をしてしまい、その療養に長期間を見込まなくてはならない場合、「働きたいけれど、体が動かない」という状況に。本人としても苦しいですが、派遣先としても対応しなければいけません。この場合も、医師の診断書を提出し、話し合いを経て、円満に退職している場合が少なくないでしょう。

(4)転居

家族の転勤に伴う転居が決まったなど、物理的に仕事を続けていくのが困難になった場合にも、雇用主との話し合いを経て、やむを得ない理由として退職できているパターンもあります。

(5)家庭の事情による環境の変化

親の介護をしなくてはいけなくなった、子供が重い病気になりしばらく看病しなくてはならないといった家庭の事情による環境の変化があった場合にも、話し合いを経て、穏便に退職できるケースもあるでしょう。

 

3:派遣会社や派遣先との関係を気まずくしたくない!穏便に派遣を辞める方法3つ

(1)誠意をもって行動する

気まずい辞め方をしないためには、派遣会社や派遣先に対しては、誠意をもって行動することが何よりも大事です。

「どうせ辞めるのだから、もうどうでもいいや」と考えて、必要な電話に出ない、言われた書類を出さないなどといったいい加減な対応をしていると、相手からの心象が悪くなります。関係が悪化する原因にもなりやすいでしょう。

(2)きちんと話し合いをする

穏便な退職をしたいのならば「辞めたいです」と一方的な意思を伝えるだけでなく、きちんと話し合いをする姿勢も重要です。

仮に派遣会社や派遣先が「それでは困る」といった場合、どのような条件ならば穏便に退職できるのか、などを根気よく話し合ううちに、打開策が見つかる可能性も高まるでしょう。

(3)事情を詳細に説明する

契約期間中に派遣を辞めたい場合には、派遣会社や派遣先に対して、その理由を詳細に説明することも重要です。プライベートなことだと考えて「体調が悪いので」「家庭の事情で」と簡潔に伝えるだけでは、どの程度の事情が潜んでいるのか、相手に理解してもらえません。

冒頭の高橋弁護士も解説していたとおり、「やむを得ない事情」が必要であるため、それを理解してもらうためにも、包み隠さずに本当のことを説明する必要があるでしょう。

 

4:派遣契約期間中でも辞められる

派遣契約の期間中に自己都合で退職するのは、おすすめできる話ではありません。しかし契約期間中は「何が何でも辞められない」というわけではなく、そこにやむを得ない事情があれば、穏便に退職できる可能性もあります。

つまり、それなりの事情がある場合には「契約期間中だから、無理をしてでも働かないと……」と背負い込む必要はなく、まずは派遣元や派遣先と話し合いをするようにしましょう。

取材協力高橋 裕樹弁護士

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人  代表弁護士。岩手県盛岡市出身。2008年(平成20年)弁護士登録。千葉大学法経学部法学科卒業。