オーガズムに導く70歳の「イカせ屋」に会いに行った美人女医【第4話・後編】―シンデレラになれなかった私たちー

「イカセ屋」……それは、指をつかって女性をオーガズムに導くことを専門にしている生業のこと。女性のリアルな心情に迫る恋愛ルポルタージュ連載『シンデレラになれなかった私たち』。今回は、そんなイカせ屋に会いに行った女性を追いかけました。なぜ彼女は、彼氏よりも70歳の男性の指を選んだのでしょうか……。
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ケース4:彼氏よりもイカせ屋のおじいさんを選んだハイスペック女性

名前:あやの(30歳・医師)

山口県から大学進学とともに大阪へ。現在は大阪の大学病院で、整形外科医として働いている。尊敬する先輩の医師から「イカせ屋」の存在を教えてもらい、会いに行く。

―前編はこちらー

イカセ屋に会いに行くことを決意した私

「イカせ屋って、なんですか? 女性をイカせてくれるエロメンみたいなやつですか?」

「ううん、70歳のおじいさん(笑)。一回3万円で、イカせてくれるの。次の日から、頭痛が取れて楽になるのよ」

先輩医師の言葉が、私の脳内で繰り返し再生されていました。

オーガズムを知らない私は、どうしてもその「イカせ屋」が気になってしまい、先輩に紹介してもらって、予約をとりました。

その数日後、私は指定された待ち合わせ場所である大阪某所のシティホテルのカフェにいました。

「あやのさん……ですか?」

コーヒーを飲みながら、ドキドキして待っていると、私を呼ぶ女性の声がしました。顔をあげると、男性ではなく、感じのいい30歳くらいのショートカットの女性が立っています。

私は少しほっとしたあと、目をふせて答えました。

「……はい」

「緊張してるよね。みんな、最初はそうなの」

女性はとニコッと笑って言いました。

「では、先生のところに案内します」

イカせ屋を利用する人たちって?

女性は、私のコーヒー代を支払うと「どうぞ」と言って、奥のエレベーターを指さしました。

一泊1万5000円程度のシティホテル。ホテル代も、治療費の3万円に含まれていいるようでした。

部屋に入ると、そこには小さなテーブルと椅子が1セット、そしてダブルのベッドがひとつがありました。女性はベッドサイドの椅子に座り、私には、ベッドの上に座るように指示しました。

恐る恐る、ベッドの端に座ると、女性は私の目を見てゆっくりとした口調で言いました。

「最初はみんな緊張するけれど、大丈夫だからね」

そして、どんな人がこの「治療」に訪れるのかを説明してくれたのです。

この「治療」は、決して性風俗やセックスの代替行為ではない。先輩が話してくれたとおり、美しくなりたいモデルや女優、そして、私のように、仕事で毎日忙しくしている女性が、「イカせ屋」にたどり着くのだそうです。

「治療によって、頭痛や肩こりが良くなったり、中にはキレイになったりという声をいただいているのよ」

女性は、自信をもってそう語りました。

そして「心の準備ができたら、先生を呼ぶから、言ってね」といいました。

なぜ私は「イカセ屋」を頼ったのか

私は内心、とんでもない場所に来てしまったな、と思いました。

この治療が、果たして今の自分に必要なのか……と考えてしまったのです。私は、男性から得られないものを「治療」という形で得ようとしているだけなのではないか……。

椅子に座っていた女性が、静かに立ち上がりました。そして、ベッドの端に座っている私の顔をのぞきこみ、こう言いました。

「あやのさんは、どうしてこの治療を受けようと思ったの?」

マッチングアプリで出会い、すぐに別れてしまった元彼のことを思い出しました。付き合って初めての彼の家でお泊りした日のことも……。

「私はまだ、セックスで感じたことがありません。胸が小さいと思われたらどうしようとか、イクふりがバレたらどうしよう……って心配してしまって、いつもセックスに集中できないんです」

私は、いつの間にか、自分の悩みを話していました。

恋愛とセックスはイコールか

私は堰を切ったように、自分の恋愛に対しての考え方を女性に話し続けました。

好きな人と付き合えたとしても、性格や体の相性が合うなんて、まるで勝ち目の少ない大きな賭けのような気がしてしまうということ。

女性がオーガズムに達することで、美しく健康でいられることは、医師の自分から見ても合理的であるということ。だからこそ「イク」ということに興味を持ったこと。

でも……それを彼氏だけに求めるのは、難しいと思うこと。

そういった理由から「イカせ屋」の存在は、女性にとっての、ある種前向きな選択肢であるように思えたということ。

女性は、否定も肯定もせず「うんうん」と頷くだけでしたが、いつの間にか私は前向きな気持ちになっていました。

そして「もう大丈夫です。お願いします」と言いました。

そしてイカせ屋に会う

女性は私の肩を軽くたたき、「3分くらいで先生が来ますので」と言い、私をひとり部屋に残しました。

今まで感じたことのないくらい、心臓がドキドキしました。

私はとうとう、一線を越えるんだ……。

この数日間、「イカせ屋」の姿を想像していました。ダンディな俳優のような男性? それとも、サンタクロースのような女性から好かれそうなおじいさん……? 

そのときです。

……コンコンコン

間をおいて3回、強くドアをノックする音が聞こえました。

私は「はい……」と小さく返事をして、ドアを開けました。

そこには、白衣を着た白髪の男性が立っていました。俳優風でも、サンタクロースでもありません。立っていたのは、近所のスーパーにいそうな、ただのおじいさんでした。

衝撃と快楽の中で…

……本当に70歳くらいのおじいさんがきた……!

私は衝撃を隠せず、うつむいてしまいました。

「イカせ屋」は、表情ひとつ変えません。

「はい、ベッドに上がってね~」

そう言うなり「イカせ屋」は、カバンから手袋を取り出し、自分の両腕にはめました。その姿はまるで、手術前の整形外科医そのもの。

「はい、自分で脱げるかな? 大丈夫ですよ。上に布をかけますから」

「イカセ屋」は慣れた手つきで白い薄い布を、私の下半身にかけます。

私は言われるがまま、ズボンと下着を脱ぎました。

そうすると「では、はじめます~」という言葉とともに、私の中に、中指を突っこんだのです。

!!!!

私は衝撃で、頭が真っ白になりました。声すら出ません。

「イカセ屋」は、中指を小刻み動かし、なでるように優しく触りました。少しずつ、自分の中がほぐれてゆくような感覚がつづき、少しずつ、指が奥に入っていくのを感じました。

その指の動きは、今まで体験したことのないものでした。やがて、同じリズムで動く指の動きに合わせて、今まで経験したことない快楽が、足先から胸元にかけて、波が押し寄せるように襲ってきました。

「イカせ屋」は、中指に加えて、人差し指、薬指と、挿入する指を増やしていきました。一定のリズムで、自分でもわかるくらいに濡れ始めた膣内を、かきだすように刺激していきます。自然と体がのけぞり、私の全身は快楽の渦に飲み込まれていきました。

目の前にいるのは、70歳の男性なのに、その姿さえも見えなくなるくらい、私は人生初めての快楽に包まれていたのです。

「はいはい、いい感じ、いい感じ。その調子ですよ〜。我慢しなくていいよ~」

このとき、はじめて我慢していた声が漏れました。「あっ……」と小さく声を漏らしたあと、どこかずっと遠いところで、自分の絶叫が響くのが聞こえました。そして、目の前が真っ白になりました。全身の体の力がすーっと抜け、まるで重力のない空間を浮いているような感覚に至りました。

私は、人生で初めて「イった」のです。

「治療」はたった15分で終了しました。

そして先生は「すっきりしたでしょ。これで終わりです」と言い残し、部屋をあとにしました。

 

考察:「イカせ屋」の存在って?

「イカせ屋」は前向きな選択肢

「その日以来、ゆっくり眠れるようになったり、肩こりが治ったりしただけではなく、精神や体の前向きな変化を感じるようになりました」

あやのさんは、「イカせ屋」の治療を受けた後の変化を、そう振り返りました。

最近では「キレイになった?」と言われることが増え、「イカせ屋」のおかげだ……と感じるのだと言います。

「不謹慎だと思う人もいると思います。でも、私にとってイカせ屋は、性欲を解消する存在ではありません。経験してみなければわからない。自分を輝かせてくれる、美容液のような存在だと思っています」

この体験談を読んだみなさんは、「イカせ屋」に通う女性のことを、どう思うでしょうか? 違和感を感じる人も少なくないと思います。ただの性欲処理だと感じる人だっているでしょう。

でも、恋愛よりも大切な人生の目標があったら……。恋という駆け引きの末、体の相性が合わないことに苦しんでいたとしたら……。

あやのさんは、取材の最後をこんな言葉で締めくくりました。

「私のように、自分の人生を充実させたい、恋愛やコンプレックスにとらわれたくないと考える女性にとってイカせ屋でオーガズムを感じることは、前向きな選択肢なのだと思うんです」

 

筆者プロフィール

毒島サチコ

photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。学生時代から恋愛ライターとして活動し、「Menjoy!」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に「妄想恋愛ライター・永合弘乃(本名)」として参加。

 

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次回:2020年1月11日土曜日 更新予定

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