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彼氏を束縛するためのアプリを開発した理系女子大生【第7話・前編】―シンデレラになれなかった私たちー
毒島 サチコS.Busujima
Case7:彼氏を束縛するためのアプリを開発した女子大生
名前:高桑蘭佳(東京工業大学大学院生/メンヘラテクノロジー代表取締役)
石川県出身。経営者の彼氏を束縛するために「株式会社メンヘラテクノロジー」を立ち上げる。ゆくゆくは、彼氏の会社を買収することを目標にしている。
私が起業した理由
今から2年前、私は会社を立ち上げました。きっと世の中の多くの起業家は「世の中を良くするため」「自由に働くため」「夢を実現するため」といった、立派な会社理念を掲げています。
でも、私が起業したのは、自分の夢があるからでも、世の中をよくしたいからでもありません。
理由はたったひとつ。大好きな彼氏の会社を買収して、恋愛だけなく、仕事の面でも束縛したかったから……。
今回は、私が起業するまでのお話をしたいと思います。
苦手だった「女子集団」
石川県の金沢のはずれで過ごした学生時代、私は、女子の集団にずっと馴染めずにいました。
女子同士は群れを作りたがり、同調できない人間を排除してゆくもの。
「みんなで」「一緒に」……そんな女子集団が、苦手でした。
子供のころから内気で内向的だった私にとって、本音を隠して明るさをよそおい、空気を読み合うのは、とてもむずかしいことだったのです。
直接的にいじめられるようなことはありませんでしたが、浮いていたのは確か。その孤独を埋めるように、私は大好きなインターネットの世界にのめりこんでいきました。
高校卒業と同時に地元を離れ、大学に通うために上京してからは、多くの地方出身の大学生と同じように、夜遊びをおぼえたり、人付き合いをみがくためにバーで働いたりするうちに、異性との接点が増えていきました。
「男の人と過ごすほうが、気楽で楽しいな」
男の人は、私ひとりとちゃんと向き合ってくれる。それがたとえ一時のことだったとしても……。
それでも、心のどこかで、私は孤独を抱えていました。
大好きな彼氏との出会い
リア充をよそおいながら、根が内向的だった私は、ネットの世界にハマっていくうちに、ライターとして記事を書く仕事をはじめました。
そしてそのころ、本当に心から好きだと思える彼氏ができたのです。
私の文章を読んで「面白い! うまいね」と褒めてくれたのが彼でした。
自分にコンプレックスしかなかった私は、その言葉がうれしくてたまりませんでした。
認められることが、何よりもうれしかったのです。
でも、彼を好きになればなるほど、新たな孤独と不安がふくらんでいきました。
彼はイベント会社を経営していて、多くの女性と接点があり、「いつか、彼が私以外の子を好きになるのではないか」と、不安を抱くようになっていったのです。
仕事と私、どっちが大事?
ある日、私は偶然、彼のメールを見てしまいました。
浮気のメールを発見したわけではありません。彼が経営する会社の、社員旅行に関するやりとりのメールでした。
会社が経営する会社が好調なことを受けて、社員全員で海外旅行をする……。当然、メンバーの中には、女性も含まれていました。
私は、衝動的に「行かないで」と、彼氏にLINEを送りました。
当然「仕事だからしょうがないじゃん」「そういうのやめてくれよ」といった返信がすぐに返ってきました。
「この先、彼以上に自分のことを認めてくれる人には、もう出会えないかもしれない……」そう思えば思うほど、彼が離れていってしまうかもしれないという不安に押しつぶされそうになりました。
そのころから、彼からの返信がだんだんと少なくなっていきました。
仕事が第一の彼にとって、自分のことを一番に見てほしいと考える私は「重い」存在だったのだと思います。
毎晩のように、不安を抑えられなくなり、友人たちに電話やLINEをし、何時間も悩みを聞いてもらいました。
はじめは親身に聞いてくれた友人も、何度も相談するうちに、「またじゃん」「依存しすぎ」「自分で解決しなよ」と、相手をしてくれなくなりました。
相談できる人が誰もいなくなった
やがて私には、ひとりも相談する相手がいなくなってしまいました。
私は自分を保つために、「誰か」に話を聞いてもらいたいと思い、NPO法人が運営する電話相談に頼ろうと考えました。
ほかに、相談する場所がなかったのです。本当に誰でもいいから話を聞いてほしいと思うほど、私の心は追い詰められていました。
「この苦しみが一瞬でも楽になれば……」そう覚悟を決めて、そのNPO法人のサイトに記された電話番号を入力しました。
でも、受話器の向こうから聞こえてきたのは、「ただいま電話が大変込み合っております」という機械音……。
何度かけても、電話はつながりませんでした。
「世の中には、自分以外にも、悩みを抱えている人がたくさんいるんだ……」
不安を隠して遊びに出かけても、一瞬の寂しさを紛らわせているだけで、根本的な解決につながりません。
彼に対して感じている寂しさは、結局のところ、彼との関係性でしか埋めることができないのです。
そんな状態を続けているうちに、「もっと一緒にいるためには、彼と仕事でもかかわりを持たなければいけない」と考えるようになりました。
そして、彼にこう詰め寄ったのです。
「仕事が最優先なら、私を社外取締役にしてほしい」と……。
後編へ続く―――
【今回のゲスト】
石川県出身。東京工業大学大学院生。2018年8月、「株式会社ガイアックス」の出資を受け、「株式会社メンヘラテクノロジー」を設立。2020年1月末、好きな人とケンカしたとき、仕事で嫌なことがあったときなど、つらいときに低価格で利用できるチャット相談サービス「メンヘラせんぱい」をリリース。公式サイトはこちら。
筆者プロフィール
愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「Menjoy!」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。
【前回までの連載はコチラ】
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「どうして私と別れたの?」元彼が語ったサヨナラの理由【第1話・前編】
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次回:2月15日土曜日 更新予定